先の先を読め

昨年か一昨年に「熱湯経営」と言う本を読んだ。その本の著者は樋口武男氏で本書の著者でもある。現在大和ハウス工業の会長兼CEOとして、日夜熱い経営を行っている。前書の「熱湯経営」は組織を熱くさせ、大企業病に打ち克つという本であるが、読んでいくうちに「血湧き肉躍る」ような感覚に陥った。

本書は著者の経営論と言うよりも著者の上司であり、恩師であり、大和ハウス工業の創業者である石橋信夫の経営について語った一冊である。

第一章「事業のツボは「直観力」だ」
人の考えには「直感」と「理論」がある。しかし本章では「直感」ではなく、あくまで「直観」としている。「直観」は第一印象ではなく、「ものやことの本質を見抜く目」であるが、経験や論理と言ったことは無視してあくまで自ら見た目などを基にしている。「直観」と「直感」は違えど似ているように思える。
過去も現在もめまぐるしく進化を遂げていく時代、時代の流れを「直観」で掴みながら、思い切り、素早く、それでいて冷静な「決断」を下すことが重要であるとしている。

第二章「アイデアは金で売るな」
経営をはじめ、様々な仕事をしていくうちにアイデアが自然とわき出てくる、アイデアを取捨選択しながら、新しい商品や手法を取り入れながら、経営は成長していく。
しかしそのアイデアは廃れる時はあるが、その時は金で売ろうとせず、捨てていく有樹も必要であるという。

第三章「矛盾があってこそ、会社は発展する」
世の中にはたくさんの「矛盾」と言うのがある。私の中では「矛盾」は取り払うべきと考えてしまうのだが、実際の社会では「矛盾」だらけであってなかなか全部無くなると言うことはないだろう。
ある方が言っていたのだが、社会人は「矛盾」をコントロールしろと言うことを聞いたことがある。上に立つものは「矛盾」を創ったり、壊したりすることができる人であると本章では言っている。

第四章「“複眼”でモノを見ろ」
経営者は小さいところを見る力だけではなく、鳥が上空からものを見るように、簡単に言えば「俯瞰する」力を持つことが大切であるという。
「俯瞰する」と一言で言っても、物理的な距離で遠くから見ると言うのもあれば、時間的な距離、例えばこの先5年から10年のビジョンを見ると言ったことも「俯瞰」と言える。
時間の使い方も「俯瞰」が大きく関わっており、「目標達成」と言った所にも大きく関わってくる。

第五章「「競生」から「共生」へ」
創業者の石橋氏は軍人として大東亜戦争に赴き、他国の捕虜にまでなった経験のある。その中で「争い」の惨さを身にしみて学び、創業者として社会の中の争いに巻き込まれ、見いだしていったもの、それは「共生」というものであった。

著者の樋口氏の経営、そして仕事の原点が創業者の基で働いたという所にある様に思えた。今となっては閉塞感にまみれてしまっている日本の企業社会において熱き魂を注ぎ込まれてくるような感じがした一冊であった。