編集者の仕事―本の魂は細部に宿る

編集者の仕事―本の魂は細部に宿る (新潮新書) 編集者の仕事―本の魂は細部に宿る (新潮新書)
柴田 光滋

新潮社  2010-06
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私はセミナーやパーティーによく参加するがその中で出版関係の方にお会いする機会がある。編集者ならではのトークもあれば、著者と編集者の打ち合わせについても小耳に挟むこともある。編集者にまつわる仕事についてはわずかであるがその理由もあり「知っている」という部類にはいるかもしれない。
さて本書である。本書は新潮社に40年間勤務し、編集者一筋で、数々の文学者の編集を担当した方が編集者の仕事について自らの体験を基に記した一冊である。

Ⅰ.「本とはモノである」
編集者にとって「本」とは何だろうかと言う質問に、章題にもあるとおり「モノ」であるという。「モノ」とは言ってもただ単に本を「読むためのもの」だけではなく、装幀の方法、文章の構成(文章そのものではなく、段落や一頁ごとの字数の配置といったもの)まで気を配っている。「読者にわかりやすく」もあるかもしれないが、それ以上に著者の考えはいかに「こだわれるか」といったところが肝になっている。

Ⅱ.「編集の魂は細部に宿る」
編集者の仕事のうち、文章など本の中身に関わるところについて紹介している。主に「体裁」と祝われるところであり、作家が書かれた原稿でおかしい文章を指摘する「校正」、行数やページ数の構成など挙げられるが、本章で最も印象的だったのは新潮新書の特徴が事細かに書かれている。新潮新書の創刊時のメンバーであるだけに思い入れが深かったという。特に新潮新書の文章は「1行39文字」と決められているという。書体に関係しているというがさすがに専門的なので本書を参照のこととしか言いようがない。

Ⅲ.「活字は今も生きている」
紙媒体での活字が誕生したのは15世紀半ばと言われており、ちょうど「ルネッサンス」の時期と重なる。「ルネッサンスの三大発明」と言われているほどであり、社会に大きな影響を与えた。その時代でも石版活字が抵抗をしていたというのは有名であり、今日の電子書籍にまつわる批判とよく似ている。

Ⅳ.「見える装幀(てい)・見えない装幀」
「装幀」という表記は、正しくは「装丁」なのだが、著者はこの「装幀」という文字にこだわりを持っている。とある辞書で見ると「幀」という漢字は常用外である。しかし長年この字を使用してきたプライドや名残からかこの字で本章も通すとしている。
では、この「装幀」をとある辞書で引いてみると、
「製本の仕上げとして、書物の表紙・扉(とびら)・カバーなどの体裁を整えること。また、その意匠。「凝った意匠で―する」」
とある。さらに補説として、
「装丁が書物の外側のデザインを意味するのに対し、装本は、レイアウトや材料の選択・印刷方法・製本様式までの形式を意味することが多い。」
あくまで一般的な表現として言われていることであるが、デザインのことを言っているという。読者にとってはデザインはお飾りにしか過ぎない様に思えるのだが、この「デザイン」がなかなか侮れない。よく「ジャケット買い」という言葉を聞くし、私もそれをやっているのだが、タイトルとデザインのジャケットをみて気に入って買ったと言うことがある以上、デザインにも細かな気遣いがあるという。

Ⅴ.「思い出の本から」
編集歴40年という歴史の中で思い出に残った本を12冊紹介している。良書と言うよりもあくまで編集者の観点で、編集の思い出と手法を織り交ぜている。

編集者はどのようなことにこだわるのか、どのような視点を持つのかと言うのがよくわかる一冊である。読者は編集者の視点を持つことは難しいことを考えると、本書ほど編集者の視点を見ることができる本は無いと私は考える。

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