やさしい精神医学入門

精神医学が認知されだしたのはごく最近のことである。この言葉が使われ始めたのは19世紀になってからであるが、実際に精神分析が行われるようになった時は1850年頃、それ以降、ブロイラーやフロイトなど精神分析の権威も生まれてきた。

日本では精神科という医療のカテゴリーができた1950年あたりに形作られたが、東京裁判において思想家の大川周明が精神的疾患(後に梅毒と判明)により免罪となった所を考えると戦前・戦中でも精神医学について何らかの研究はあったように思われる(実際の歴史については史料が無いため何とも言えないが)。

話を現在に戻すと、日本では精神疾患患者は減少している一方で精神疾患の入院患者数は世界でもトップクラスだという。さらに「精神医学」でも「おまえは精神病院に行け」や「精神科の通院歴がある」など偏見・差別的な表現を用いることに使われることも少なくない。

さて、本書の話に移るが、これまで「精神医学」の歴史や日本の現状について述べてきたが、具体的に「精神医学」とはいったい何なのか。どのような人が診断、カウンセリング、治療まで行っていく課程、病状を見分ける基準など「精神医学」と一括りにしてもわからない所は結構多い。

本書はめくるめく精神医学のイロハについてケーススタディとともにわかりやすく書かれている。医学的なことよりも現状とともに述べられているので「医学」と言うよりも「社会学」の観点から読める一冊である。