仕事に幸せを感じる働き方

あさ出版様より献本御礼
本書の著者に初めてお会いしたのは2月の半ば、とあるセミナーのことであった。当初は「笑福亭鶴瓶の兄弟子」という言葉が印象的であり、後々出版されると言うことを聞いたことがある。満を持って出版された本が本書である。

仕事や会社に関して不満を持ち転職を繰り返す人は少なくない。現在のように「就職難」と呼ばれる時代であっても、である。

そもそも、「「仕事」とは何なのだろうか?」「「働く」ことは何なのだろうか?」というのを真剣に考えたことがあるのだろうか。むしろ周りに対する不満ばかりこぼしていることが多いだろう。

就職難、不安定な雇用情勢、だからでこそ「働く幸せ」について考えるべきなのではないかと言う所で本書に入る。本書はまさに仕事について、会社について苦しんでいる人たちがどのようにして変えられるかについて示した一冊である。

第1章「転職しても不満は消えない」
最初にも書いたように仕事や会社に対する不満でもってやめたと言う人が後を絶たない。私の周りでもそういう人を見たこともあり、聞いたこともある。しかし「不満」を理由に退社をし、転職をしても、結局転職先の会社にも嫌気を差し、さらに転職という悪循環となってしまう例も少なくない。
「あの上司がいやだ」「自分はがんばっているのに何で評価してくれないんだ」というのが主な不満の例と言える。

第2章「仕事の不満はこうしてなくそう」
しかし、その不満を「置き換えてみたら」どうだろうか。例に出した不満はすべて「他人」、または「自分でない何か」に対する不満でしかなく、自分がどうかというよりも、むしろ相手が変わって欲しいという願望でしかない。
それを「自分」の視点に置き換えてみたらどうか。「もしも自分が上司の立場だったら」「もしも自分が相手を評価する立場だったら」と置き換える。そのことで自分に何が足りないのか、何が必要なのかがわかってくる。妬みや恨み、不満を持っても自分は何も変わらない。むしろ自分の居場所がなくなるだけである。

第3章「仕事に幸せを感じる働き方とは?」
転職をしてステップアップをするのは一握りと言われている。著者は転職できる人をこう定義している。

・会社で上位5%にいる人。
・給与が半分になっても、やりたい仕事をしたいと思っている人(p.84より一部改変)

著者はこの2つのパターンでしかないと定義づけている。不満もさることながら、「ただ、なんとなく」という理由で転職をしても、結局前の会社と同じような不満や嫌気を持ってしまう。
だとしたら今の仕事、会社の中でどのように自分を育てていけばよいのか。今の仕事を好きになることである。新人の頃は雑用を任せられることが多い。その雑用の仕事を好きになる、もしくは日本一、世界一の雑用当番になることで仕事はさらにステップアップすることができる。本章では阪急グループ創業者の小林一三の言葉を引き合いに出しているが、モハメド・アリの言葉もここで紹介する。

「人は世界一のゴミ収集人になれる。世界一のモデルにだってなれる。
 たとえ何をやろうとそれが世界一なら何も問題はない」

今の仕事を極めることこそ楽しさとなり、努力に結びついて行くのではないのだろうか。

第4章「大嫌いなあの人と、仲良くできる!」
会社には十人十色の如く性格や人間、嗜好など様々な所で違う人がいる。その中で「大嫌い」な人とまでは言わなくても、嫌いな人はいる。しかしその人に対して「食わず嫌い」よろしく大してコミュニケーションを取っておらず「嫌い」と判断してしまうという傾向にあるのだという。
意識的にコミュニケーションを増やすことで「嫌い」から「好き」になる架け橋にする。

5章「プロフェッショナルの仕事の姿勢」
いよいよ著者の生い立ちについて紹介される。著者は小学校卒業とともに六代目笑福亭松鶴に弟子入りした。その3ヶ月後に鶴瓶が弟子入りした。そのことから「鶴瓶の兄弟子」と呼ばれた。噺家人生はわずか5年と短い物だったが、鶴瓶や立川談志から学んだことについて余す所なく書かれている。
とりわけ立川談志のエピソードは印象深かった。本人の著書には書かれない魅力がひしひしと伝わってきた。

第6章「仕事で夢をかなえるために」
チャンスは誰にでも平等にあると言われている。運がよい悪いはそのチャンスを掴めるかどうかにある。ではチャンスを掴むためにはどうすればよいのか。それは「目標を持つこと」や「感謝の気持ちを持つこと」と言った心がけから掴むことができる。

まさに「転職」を考えるまえに是非読んで欲しい一冊と言える。仕事に対する不満、会社に対する不満を持つ者もまた同じである。仕事や「働く」本質をここまで引き出してくれる一冊と言える。本書を読んでそう思った。