新左翼とロスジェネ

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新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C) 新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C)
鈴木 英生

集英社  2009-04-17
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「左翼」という言葉が隆盛したのは1960年代後半から1070年代にかけてである。ちょうどそのときは「60年代安保」や「大学紛争」が起こった時期と重なる。
「左翼」というと、日本赤軍も思い出すがついこの前に永田洋子死刑囚が獄中で亡くなり、日本赤軍にまつわる事件は終わったという声があるが、私はこういう時こそ日本赤軍とは何だったのだろうか、左翼とは何かを考える必要がある。
戦後最長の好景気と言われた時代には「格差」の問題が起こり、ピークを迎えたのは2008年頃、ちょうど本書にも取り上げられている「蟹工船」がリバイバルヒットした時代である。
戦後間もない頃から今まで活躍が続いている「新左翼」の存在とは何か、本書はそれを歴史とともに解き明かしている。

第一章「「蟹工船」、希望は戦争」
「「丸山眞男をひっぱたきたい」、31歳フリーター。希望は、戦争。」
このフレーズを思い出さずにはいられない。「ロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)」を象徴するような言葉である。これはオピニオン誌の「論座」に投稿された論文のタイトルである。
「新左翼」とはいったい何なのだろうか、既存の「左翼」との違いとはいったい何なのか、そして戦後間もない
頃の「新左翼」、そして「貧困」に喘いでいる現在の「新左翼」とはどのような違いがあるのか、本章では現代の「新左翼」を見ている。次章以降は既存の左翼など「左翼の歴史」を読み解いている。

第二章「新左翼前史、戦前〜50年代」
戦前は「治安維持法」などがあり、共産党などの「左翼」の組織は検閲の的だった。「蟹工船」の作者である小林多喜二も治安維持法で逮捕され、特高に虐殺された。
アンダーグラウンドの中で活動せざるを得なくなった左翼組織の中には後に共産党議長に長らく勤めることとなる宮本顕治もいた。
「治安維持法」がなくなり、表沙汰でも共産党の活躍ができるようになってから表だった事件として1952年の「血のメーデー事件」がある。

第三章「黎明期から60年安保へ 58〜65年」
国家的に封殺された左翼組織は戦後とともに隆盛を始めた。「血のメーデー事件」はそれを象徴として表れている。その後革命組織と呼ばれる組織は乱立した。
本章では60年安保とともに、革命組織の一つである「ブント」を取り上げている。

第四章「頂点 叛逆する全共闘 61〜69年」
「団塊の世代」は別名「全共闘世代」と呼ばれる。ちょうど大学生だった時代には60年安保や大学紛争が合った時代であり、そのなかで革命組織に入り、既存の権力に武器を持って立ち向かうことを美学としていた。いわゆる「叛逆(はんぎゃく)」が美学として受け止められていながらも、当時の政治に対して「武器」をもって立ち上がるといったことが「正義」だととらえられていたのかもしれない。

第五章「自己否定 解体する全共闘 68〜69年」
革命組織は分裂を重ねながらも革命運動を続けていった。しかし、糾弾の矛先は次第に変化していき、既存の左翼にですら批判の対象となった。リベラルとして知られる丸山眞男でさえ批判の対象となり、戦後平和の象徴でとして立命館大学にある「きけ わだつみのこえ」の像が学連によって破壊される事件もあった。

第六章「極北 内ゲバとその果てへ 69〜73年」
さらに左翼運動は組織の内部抗争、いわゆる「内ゲバ」の様相を呈してきた。他社否定、及び自己否定により、内ゲバとなり、それが「襲撃事件」という形で表れ、死者もでるほどのものにまでなった。
本章の後半には日本赤軍のことについても取り上げられている。

第七章「自己否定から少数者の運動へ 74年〜現在」
一昨年に「菊の御紋章と火炎ビン―「ひめゆりの塔」「伊勢神宮」が燃えた「昭和50年」」という本を取り上げたとき、東アジア反日武装戦線「狼」を取り上げた。本章ではその組織について取り上げられている。

第八章「「消滅」した新左翼 78年〜現在」
全共闘世代による「新左翼」の最後の運動というと「成田空港管制塔占拠事件」がある。本章ではその事件のその後の展開と、「全共闘」と呼ばれた世代の現在についてを考察している。

今と昔の「新左翼」の違いとはいったい何なのか。単純なところで言うと、武装蜂起しているところと言論蜂起しているところ、もう少し突っ込んで見ると、「革命」そのものか、「格差」からの打開といったところにあるのかもしれない。
主義・思想の変遷はなかなか読み解くのは難しいものの、歴史とともにそれを「知る」面白みはある。本書を読んでそう思った。

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