先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!

本書のタイトルを見て少し驚いた。というのは蛇やトカゲが脱皮するのはわかるが、カエルも脱皮すること、そしてその皮を食べることに、である。生体の神秘はつくづくおく深く、かつ面白味を感じてしまう。

本書はカエルばかりではなく、ヤギ、カニ、カラス、イタチなど様々な動物の行動、そして人間の奇怪(?) な行動に至るまで面白おかしく考察を行っている。

「ヒキガエルも脱皮する、そして皮を食べるのだ」
本書のタイトルを見て、必ず思うことがある。

「なぜカエルは脱皮して、その皮を食べるのか」

本章ではその「なぜ」について実際にヒキガエルが多く棲む所に赴き、生態を観察、さらに実験をしながら「なぜ」について解き明かしている。

「ヤギの脱走と講義の両立をさせる方法」
奇妙なタイトルかもしれないが、著者が実際に体験した「事件(?)」である。講義の為の準備が終わった直後にヤギが逃げ出したと言うところから事件は始まる。しかし著者の機転は凄く、脱走した理由、そして生態を実地で講義するという形に切り替えたのである。
著者だからでこそ、といえるような機転と「事件」を講義に結びつけたところに驚き、かつ賞賛をしてしまう。

「海辺のスナガニにちょっと魅せられて」
著者は現在、鳥取環境大学にて教鞭を執っている。鳥取きてまず思いつくのが一つ。そう、「鳥取砂丘」である。本章ではその鳥取砂丘を舞台にして「スナガニ」の生態を追っている。スナガニは初めて聞くし、見たこともない。しかし写真を見ると目がかなりかわいい。そう思えるのは私だけだろうか。

「カラスよ、それは濡れ衣というものだ!」
カラスと言えば日本どこにいてもいる。しかも朝から晩まで鳴き声がなり止まず、かつゴミあさりまでするのでいやな存在といえるのだが、本章ではそんなカラスの子どもを助けた時のエピソードを綴っている。
本章のエピソードを見てふと思いついたのだが、秋頃になると「カラス注意」という張り紙をよく見る。これはカラスの卵が孵化し、カラスの赤ちゃんが産まれる。そのとき親カラスは赤ちゃんを守るために必要以上に警戒をするという。時には人間にも襲う危険性があるため「カラス注意」の張り紙が貼られる。その原因と本章のエピソード、メカニズムが少し似ているかもしれない。

「春の田んぼでホオジロがイタチを追いかける!」
「食物連鎖」という言葉があるとおり、生物には弱肉強食の仕組みが成り立っている。
本章では「ホオジロ」と「イタチ」の二匹の生態をもとに紹介している。

「NHKのスタジオのテーブルの上を歩きまわった三匹のイモリ」
私も本章のものとは少し違うのだが、ある勉強会にて壁を歩き回った二匹のゴキブリについて知っている。夏頃に出てくるタフですばしっこいものではなく、ジャングルで主に見かける大人しいゴキブリである(名前は忘れてしまいましたが…)。
私事はさておき、NHKの番組にてイモリが歩き回るというのも驚きであるが、それをさせた著者も凄いと感じたところである。

「ペガサスのように柵を跳び越えて逃げ出すヤギの話」
2章に続いてまたヤギの話であるが、今度は少し驚いた。なんとヤギが柵を跳び越えて逃げ出すというエピソードである。「柵を跳び越える」というところに驚きを感じた。

「動物の行動」をここまで面白く書かれている一冊を私は見たことがない。ただ面白いだけではない。動物の生態について「知りたい!」と思わせるような表現がふんだんに使われており、本書で紹介されている動物についてどんどんと知りたくなる。本書は笑いと興味を引き立たせてくれる絶好の一冊である。