宇宙を感じて仕事をしよう

人は誰しも「幸せ」を求めている。働き方にしても、生き方にしても、である。

公認会計士・税理士でありながら(4月1日から税理士業務もスタートした)、経営や働き方、ヨガ、セラピーなどのセミナーを主催している。おそらく私が見てきた中でもっとも「異端」と言える公認会計士であると思うが、そうなった所以が本書には赤裸々に書かれている。

そしてそこから本書では「働く」ことは何なのか、「幸せに」働くことは何なのかを無限に広がる「宇宙」とともに伝授をするというのが本書である。

第1章「働くとは、幸せを創造すること」
「草食的経営」や「共存型経営」といったことを取り上げられている「こころの価値を売る世界にただひとつだけの会社」を昨年、当ブログで紹介した。本章ではこの本とよく似ている。
それはさておき、かつてはライバルに追いつき、追い越し、突き落とすといった「肉食的経営」が主流であった。他社の幸福を奪ってでも利益を上げよう、というような思想が蔓延していた。
ところがバブルが弾け「安定雇用」が崩れ始めた今、その経営や働き方にも疑問符が生じてきた。働き方が変化し始めた。
本書でも「幸せ」と「価値」を求め続けてきている会社を例に挙げながら「働く」とは何か「経営」とは何かについて、著者自身の観点を述べている。

第2章「三つの軸を広げると、生き方が変わる」
「三つの軸」とはいったい何なのか、本書では、

・「時間軸」
・「空間軸」
・「感覚軸」

と定義されている。ビジョンや中長期的な視野、目に見えないものを信じる心を持つことによって人間的にも広がりを見せることができ、生き方も変わるのだという。
そのため著者はヨガやセラピーのワークショップを主催しているのだという。

第3章「手ばなせば、もっと楽に生きられる」
「捨てる技術」や「断捨離」という本がベストセラーになったが、その理由はいったい何なのだろうか。思考に置き換えると、捨てることによってそこに余白が生まれ、その余白の中で新たなアイデアや考え方を作ることができるのだという。
本章では「余白」という訳ではなく、判断や思考の足かせとなる「負の感情」、今まで積み上げてきたものを「手ばなす」ことによって、生き方に「余裕」や「幸福」が生まれるのだという。

第4章「幸せをもたらす人生のバランスシート」
バランスシートというと金銭の「資産」や「負債・資本」などどちらかというと「形のある」ものバランスがどうであったかを見るシートであるが、本章ではそうではなく、目に見えない「幸福」をバランスシートでは「自己資産」「他人・自己資本」に分けて自分のビジョンと支えとなる人たちを「自己分析」という形にしてみようという章である。
これまで「自己分析」をするような本はいくつも見かけてきたが「バランスシート」の形で書くのは、会計士らしくもあり、かつある意味で「収支(?)」がわかるため面白い。

第5章「つながりを取り戻すために」
前章にある「バランスシート」は単純な自己分析ではなく、「支えてくれる人・団体」の欄がある。これがもっとも重要であり、本章での核となる。
何かというと、人は一人で生きていくことはできない。周りの「つながり」や「支え」があるからでこそ、生きることができたり、夢を叶えることができる。本章ではそのことについて書かれている。

第6章「天命を知り、生かされて生きる」
本章ではいよいよまとめに入るのだが、その中で「日本人の労働観」というのが一番目を引いた。「日本的な経営や労働観がすべて良い」という訳ではないのだが、欧米かぶりとなり、日本的な価値が否定されている今だからでこそ、かつてあった価値観を見直すべきではないかということである。

一昨年に、キッコーマン醤油のCMで「幸せってなんだっけ?」というフレーズが23年ぶりに復活したことが話題となった。本書、そして著者もまた「幸せ」や「価値」について紆余曲折をしながら見出してきた。その結晶が本書であり、著者の業務そのものに映し出されている。