「紙」と共に去りぬ

本書もその意図でタイトルを決めたと述べているが、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」を捩った一冊と言える。本書は簡単に言うと出版界の行く末について書かれた一冊であり、電子書籍化についても言及している。最近では紙媒体の危機と叫ばれていることを考えると本書がこのようなタイトルになっているか、含蓄がいく。

第1部「「紙」とともに去りぬ」
出版社のことについて書かれた一冊と書いたが、本書の著者は出版元であるリベルタ出版の代表を勤められている方である。その方の出版に関してのことを余すことなく語っているため説得力は大きい。またブログ「零細出版人の遠吠え」というのも運営している。
書店でもなかなか目にかかることのできない出版社はいくつもある。中には人知れず消えてしまう(倒産してしまう)出版社も少なくない。
私にとって零細出版の意味とは何か、「痒いところに手が届く存在」だと考える。大手出版社だと出版社内、もしくは出版業界などの「タブー」があってなかなか出版してくれない、もしくは各々にとって「面白味がない」と言われる所でも出版することができる。読書において刺激を求めたい私にとってはそういった出版社ほど重要と考えている。

第2部「1冊の本から広がる世界」
本章では出版社の人間の立場からベストセラーやロングセラーについてを述べている。出版社の人間であるだけに本の構成などからいかにベストセラーやロングセラーとなったのか、というメカニズムも紹介されている。いわゆる「出版社泣かせ」と呼んで良いのかもしれない。

第3部「メディア社会を読み解く」
出版社の立場からみた時事問題に関して、時には毒づきながら主張をした所である。「痒いところに手が届く」とはまさにこのことを言っているのかもしれない。

第4部「零細出版人の周辺」
著者の周りの人物、挙げてみると両親、子供、さらにはリベルタ出版の方々のことについて赤裸々に述べている。プロフィール欄では書くことのできない素顔が覗かせる。

本書は最初に紹介したブログ「零細出版人の遠吠え」を厳選したものである。中には数年前の記事も掲載されていたのだが、それらの記事も色褪せることなく今日でも考えさせられることが多かった。