震災恐慌!~経済無策で恐慌がくる!

(株)スタジオビビ 乙丸様より献本御礼。
東日本大震災が起こって約2ヶ月経つ。余震の心配が薄れてきたとは言えまだ油断のできない状態にあることは間違いない。しかし復興に向けて一歩ずつではあるが動き出していることは事実である。

震災によって多くの尊い命、財産が失い、経済も多大な損失を受けた。復興と同時に経済も復活に向けて前進すすしかないのだが、本書はこの震災によってリーマン・ブラザーズを凌ぐほどの大恐慌が訪れるのではないかと警鐘を鳴らしながらも、それを阻止するためにはどうしたら良いのかを提言している。

第1章「恐慌はそしらぬ顔をしてやってくる」
過去、日本ではいくつか震災が起こっていたのだが、とりわけ有名なものでは「関東大震災」、そして16年前に起こった「阪神・淡路大震災」が挙げられる。これに共通することとして挙げられるのが、この震災が起こった後に不況、もしくは大恐慌に陥ったことにある。「関東大震災」の後にはアメリカで「ブラック・サースデー(日本では「昭和大恐慌」)」が起こった。「阪神・淡路大震災」では「失われた10年」のまっただ中にあった。その数年後には拓銀(北海道拓殖銀行)や山一證券が破綻・倒産し、金融危機に見回れた過去がある。

第2章「今、本当に起こっていること」
震災は今も続いている。それは地震による復興もそうだが、福島第一原発のメルトダウンが長きにわたって尾を引くことから、この震災から「完全に」立ち直れるのは短くて十数年、ひどくなると数十年〜百年以上になると言われている。
このような状況の中で日本はどのような手を打てばよいのか。これは与党である民主党だけの問題ではない。野党も含め、もっと言うと国や地方、ひいては国民全体に書けられている難題と言える。

第3章「最悪のシナリオ」
マクロ的な観点で経済的に復興させるには経済政策でしかないのだが、これまでのニュースでは「増税」という言葉が乱舞している。しかし著者の二人はその政策こそ日本をダメにすると批判している。その根拠として二つ取り上げられている。
一つは「昭和大恐慌」が起こりその政策として「金本位制の復帰」をした。そのことにより恐慌は強まり当時の大蔵大臣であった井上準之助は暗殺された。
もう一つは「阪神・淡路大震災」の2年後にも消費税を3%から5%に引き上げた。それにより「失われた10年」と呼ばれた不況もさらなる深みに達してしまったのだという。
この繰り返しを政府はまた行うのか、と著者らは疑問を呈している。

第4章「資産市場はどうなるか」
今回の震災において、経済的な打撃を受けたのは知っての通りである。しかし政府や日銀は様々な政策を立てているものの、その中身は殆どなく、言わば「無策」と言われてもおかしくないようなものであった。

第5章「震災恐慌を防げ!」
震災恐慌はこれから起こるのかはわからない。しかしそれを、国家単位で未然に防ぐにはどうしたらよいのかを「やってはいけないこと」「危険なワード」を中心にどのような政策を行うべきかを提言している。
「増税」や「金融引き締め」ではなく「インフレ」をもたらすような政策について提言をしている。
そしてもう一つ、これは大変重要なことだが、「誰にも批判されない」政策をずっと小出しにしてはいけないことを挙げている。政治家にしても官僚にしても「批判の嵐にさらされる」立場である。それを恐れるよりもむしろ誇りにする、もっというとプロレスの「ヒール」になったほうが良いと私は思う。

今でこそ日本は「非常事態」と言える。そのような状況の中で無策を続けていては必ず世界から嘲笑の的となる(当の本人たちはどこ吹く風のようだが)。他国や野党の批判にかまうよりも、むしろ復興に向けて大胆な政策を行うことが先決であるが、大胆な政策を出せる政治家はいるのだろうかと思ってしまう。