母性のゆくえ―「よき母」はどう語られるか

「母性」は不思議なものである。「母性」というのはどこからきているのだろうか、「母性」の歴史は何なのか、これまでそれを考察した本を私は見たことがない。

「母性」「母親」「女性」これはどこからきて、そしてどこへ向かうのか、本書はフェミニズム、ジェンダー論でも第一人者として知られる学者の考察である。

第1部「現況証明書」

「あなたはどうして母親になるのか」

それが本章の大きな意味を持つ質問である。子供をもうけることによるメリットを求める、孤独をなくすなど理由は様々であるが、母親になることの意義は様々であることには変わりない。
もう一つとして「母親」になることの現実が挙げられる。「母親」になることによって「自由」はどうなっていくのだろうか、という所にも考察のメスを入れている。

第2部「自然主義の攻撃」
「女性」と「母親」の違いとは何なのか。
本章の命題はこれに喩えることができる。これまで女性は政治的にも社会的にも、下として扱われてきた。だからでこそ、女性の社会進出や政治進出はまっとうであるというのが意見として挙げられている。
男女差別のことを主張しているようだが、果たして女性は蔑ろに扱われてきたのかというとそうとは限らない。そこに「母親」の役目が入ってくる。女性の立場と男性の立場は比べることができない。「母親」というのは特別な立場にあることを説いている宗教や哲学も少なくないのだから(例えば「儒教」など)。

第3部「重荷を背負いすぎて・・・・・・」
母親としての役割の「重荷」により、育児放棄に走ったり、虐待が起こったりするひとが多い。
では母親が背負う「重荷」とは何か。様々ではあるが、もっとも大きな所では「母親の使命感」があるのではないかと分析している。

女性学から「母性」と説きつつ、母親としてどのような役割があるのかを見ている。女性学の観点からの「母性」「母親」「女性」という新たな切り口を見ることのできた一冊である。