会社をつぶす経営者の一言 「失言」考現学

(株)イー・プランニング 須賀様より献本御礼。
企業の不祥事が後を絶たない、と言われているが果たして本当なのか。
統計からして増加傾向にあるわけではないのだが、「不祥事の報道が増えている」と言えば合点がいく。不祥事報道が増える前も、企業の不祥事は横行していったのだが、政治的な事柄などが多いことから、取り上げられることが少なかったのではないかと考えられる。

不祥事はあってはならないことであるが、いったん不祥事が起こってからどうするか、これは会社の顔である経営者として大きな仕事として重くのしかかる。

本書は会社を左右しかねない不祥事における記者会見の一言がどのようであり、そして会社が、世論が動いていったのかについて取り上げている一冊である。

第1章「部下、従業員に責任を押しつける経営者」
いわゆる「責任転嫁」の典型のことを指している。「企業の慣例だから」「部下(あるいは従業員)が勝手にやったことだから」という発言が繰り返し世論を顰蹙させることもある。
これは政治に関しても同じことが言え、ある種のプライド、あるいはエゴイズムを守ることに専念しすぎることによる。最近急成長してきた企業や長年の一族経営をやってきた企業に多い。
また、これは最近起こった「生肉食中毒」についても同じことが言える。この場合は業者のみならず国にも責任があると転嫁していた。その後の末路はすでにニュースにもあるとおりである。

第2章「世論を敵にまわす「KY」発言」
本章でも企業や大学などの発言を取り上げられているが、刑事事件では「光市母子殺害事件」にて弁護団の発言にて「魔界転生」や「ドラえもん」などの発言で世論が顰蹙を買ったことは、4年経った今でも有名な話である。そのことから懲戒請求が殺到するなど「扇動事件」もあったのだが、弁護団に対する怒りを象徴していたのかもしれない。

第3章「「殿」を守って会社をつぶす」
「殿を守る」ために見苦しいことをやる、というのは今に始まったことではない。「私たち」と「企業トップ」、同じ人間ではあるが、思考や価値観がかい離する点は数多くある。それが悪い意味で表面化した例がそこにあるのではないか、と考える。

第4章「「本音」むき出しの、居直り会見」
「居直り」「開き直り」と言った会見も存在するが、とりわけ多かったのが建築や食品にまつわる様々な「偽装」の中で起こった発言を中心に取り上げられている。

第5章「火に油をそそぐ、あんまりな一言」
「火に油を注ぐ」というと、雪印食中毒事件はあまりにも有名である。本章でも最初に取り上げられており、リーディングカンパニーになった事による「驕り」を垣間見ることができる。

第6章「あっぱれ見事な記者会見」
これまでは「残念」、もしくは発言が火種となったものを取り上げてきたが、逆に不祥事の火種を消したような会見もある。本章ではそういった例を紹介しているが、この章でも有名な企業の事例が挙げられている。

「その「記者会見」間違ってます!―「危機管理広報」の実際」「謝罪の研究―釈明の心理とはたらき」など企業不祥事にまつわる謝罪や記者会見について取り上げられた本はいくつかある。しかし本書は記者会見の内容よりも、むしろ「発言」にスポットを当てている所が特徴的である。

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村上 信夫

中央公論新社 2010-06-10
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