逆境を越えてゆく者へ

(株)オトバンク 上田様より献本御礼。
今から100年ほど前「武士道」という名著が出版され海外で話題となった。その人物は後に国際連盟の事務局次長を歴任した新渡戸稲造である。その人物が「自警録」「収容」という本を上梓していたことはご存じであろうか。恥ずかしながら私自身は、本書に出会うまで「武士道」しか知らなかった身である。

それはさておき、本書は逆境を越えていくこと、そして「逆境であること」の需要性とそれを乗り越えていく力についてを「修養」「自警録」から掻い摘んで現代語にまとめた一冊である。

第一章「逆境を越えてゆく者へ」
「逆境」とはいったい何なのだろうか。ちょっと調べてみると、

「苦労の多い境遇。不運な境遇。」(goo辞書より)

とある。おそらく自分でも逃げ出したくなったり、自暴自棄になるなどといった感情に陥りやすくなる。また他人に対しても親切でなくなるといった感情も出てきてしまう。
その逆境を乗り越えるのは並大抵の力では乗り越えることができない。むしろ人間として成長のできる「糧」として考える、もしくは苦痛を打ち明けることのできる親友を持つ、といったことも大切である。

第二章「人生の危機は順境で起こる」
人生において危険なところは「逆境」ではなく、むしろ「順境」、すなわち「安定」した状況にあるのだという。とりわけ日本人は「安定」や「ノーリスク」に逃げ込む傾向にあるのだが、元々その行動自体がリスクになる。マイクロソフト創設者のビル・ゲイツが、

「リスクを負わないのがリスク」

という名言を残している。まさにこの言葉通りでリスクを負わない時、順境といった安定的な上京に陥っている時こそ、後の逆境にも気づかず、下り坂であるかのように凋落の一途を辿ってしまう。

第三章「決心を継続していくということ」
続けることの大切さを説いているところである。「継続は力なり」と言われているが、内的なよういんで続けられない。いわゆる「三日坊主」になりやすいということをよく聞く。しかしその「三日坊主」を乗り越え続けていると、今度は続けないとむしろ落ち着かなくなる作用がある。そこからどんどんと続けられる。
しかしその継続を妨げられるものに「外的要因」がある。他人によるもの、環境によるものそれぞれであるが、それによりせっかく継続できたものが嘘のようにできなくなることがあるのだという。これは私もプロジェクト移動により環境が変わることが度々あり、そのことによって続けられたものが途絶えてしまったケースはある。

第四章「四つの力を貯蓄する」
「貯蓄」とは言っても様々なものがあるという。あげてみると、

・「金銭」
・「知力」
・「体力」
・「精神」

とある。一つ目と二つ目はごくあたりまえであるのだが、三つ目と四つ目はあまり言われていないため気になる。簡単に言うと「健康でいること」「一日一善を心がけること」というのが例に挙げられる。

第五章「臆病を克服する工夫」
気の弱い人はいる。かく言う私自身もかなり気弱であり、人前でのプレゼンは大の苦手である。人前でのプレゼンの前は必ずと言っても良いほど緊張する。「緊張するな」と言われてもどだい無理な話であるが。
緊張でも臆病でもよいのだが、その状況の中でも最高のもの、できる限りのことを尽くす。遠い道のりであるが、重要であるという。

第六章「人生の決勝点」
人生の決勝点をあげるためには、「負ける」ことにあるという。あべこべかもしれないが、負けることによって半生点を見つけ、改善し、さらに強くなれる要素がある。負け続け、たまに勝つというサイクルを続けることによって自ずと高い決勝点へと近づいていく。

「武士道」に限らず、本書で取り上げている「修養」や「自警録」も新渡戸稲造の名著の一部である。様々な人生と要職を経て見聞きし、構築していった哲学は100年たった今でも語り継がれてきている確固たる証拠である、と言えるのが本書である。