新書七十五番勝負

当ブログ、及び前身の「蔵前トラック」と書評を続け、はや4年半経つ。これまで書評した本は1200冊を越えるが、初期の頃は大概新書が中心であった。重箱の隅を突いているような本や、入門書、あるいは専門に関して狭くも深いような本と様々なものがあった。新書は毎月約70冊、新刊が出るため当たり外れも激しく、ブログで書評した当初は俗に「外れ」と呼ばれた本をどれだけ腐したことか、と述懐する。良くも悪くも「面白い」と呼ばれるのが新書であり、新書にしか発見できないものもあることを考えると、「約200ページほどの福袋」という形容もできる。中身は面白いかどうかわからないのだから。

本書は新書を75冊紹介しているが、「まさに新書」と呼ばれる新書好きの方にはたまらないものもあれば、これから新書が読みたいひとのための新書、さらには今でこそ様々な新書が存在するのだが、これからの新書はどのようになるかの行く末を見ることのできる新書とで三部構成で紹介している。

<新書のなかの新書>
おそらく私が最も興味深いと言う所である。最初にも書いたとおり、書評を書き始めた当初は新書を取り上げることがほとんどであったため、新書に関してはそれなりにどういう傾向にあるかわかっているからである。
とはいえ最近では新書を取り上げる冊数は減少しているせいか、現時点で「詳しい?」と訊かれると首を傾げてしまう様な状態となってしまっている。
むしろ本書の著者と私とで比べると新書の詳しさは月とスッポンほどの差であろう(無論、スッポンは私である)。何せ新書マニアが最も心をくすぐられるような選書をしている所から相違いざるを得ないのである。

<はじめての新書>
「私、新書初心者なんですけど、お薦めの新書って何があります?」
私は様々な「読書会」に参加したことがある。ビジネス書が多い中で新書やあまり取り上げられない本を紹介することもある。そのためこの質問を訊かれることが度々ある。
新書初心者に対して何が良いのかについても悩みどころである。その人が何が得意で何に興味を持っているのか、事前に聞く必要がある。それによっておすすめする新書が変わるのである。
本章では漠然と「新書初心者」の人に対してほぼすべてのジャンルについておすすめの本を網羅している。もし「新書初心者だけど、色々と読んでみたい。もしくは、あらゆるジャンルに興味を持っている」とするならば、本章を読むことをおすすめする。

<これからの新書>
新書はこれからどのような方向へ進むべきかを表している章である。本章の冒頭には著者時指針の「新書観」も述べられている。

新書は必ずしも「マニア」のためのものでもなく、読書好きのものでもない。むしろその方々も含めて、「愉しみ」や「奥深さ」を見いだすことができる、あるいは「わかりやすい」など一般書や専門書にはない多角的な角度を持つことができるのが新書の真骨頂と私は思う。本書もその魅力を存分に伝えられており、もし新書について興味を示したのであれば是非本書を紹介したい位である。