コーヒーを通して見たフェアトレード―スリランカ山岳地帯を行く

「フェアトレード」は簡単に言うと「公正な貿易」のことを言う。貿易立国と呼ばれる日本ではもはや「あたりまえ」と呼ばれるようなものであるが、バブル景気前後にはアメリカとの「貿易摩擦」などにより「ジャパンバッシング」が起こった記憶があった。それからだんだん「フェアトレード」の意識が高まった。

あらましはそこまでにしておいて、本書ではその「フェアトレード」についてスリランカ山岳地帯から生産されるコーヒーを通して見ている。

1章「「フェアトレード」との出会い」
本書を読みはじめて思ったのが「スリランカでコーヒーがとれる」ということ自体不思議であった。元々コーヒーの名産といえばブラジルやキリマンジャロ山脈がほとんどであり、スリランカ産のコーヒーは聞いたことが無いからである。
ただ本章に入る前のプロローグではスリランカとコーヒーの歴史について綴っており、およそ140年前まではスリランカの名産の一つとして数えられていた。しかしその140年前をきっかけにぱったりと消え、そのかわりに紅茶が台頭となった。なぜそうなったかという史料はほとんど見つかっておらず、「歴史の闇」の一つとして数えられている。
本章ではフェアトレードの重要性についてかつて「奴隷制度」があった歴史や植民地支配の歴史を追っている。

2章「幻のスリランカコーヒーを探して」
先ほど140年前からは紅茶の生産が中心となった、と言ったが現在でも「セイロン紅茶」を中心に生産しており、世界第2位の紅茶生産国とも言われている。
第1章でも書いたが、その国はかつてコーヒーが生産されていたがその原因として「さび病」が挙げられている。「さび病」とはコーヒーの葉に菌が付着してしまい、コーヒーの木を枯らしてしまうといわれるものである。それがぱったりなくなった起因となっているかどうかについては不明であるため「歴史の闇」のひとつと言われている。
本章ではその消えたコーヒーの謎を追うため、スリランカに足を運び、「幻のコーヒー」と呼ばれるアラビカコーヒーに出会う。その出会いを通じてスリランカコーヒーがなぜ消えたのかを解き明かしている。

3章「ほんとうの「フェアトレード」とは」
本書はそれを解き明かすだけではなく、コーヒーの名産地を復活させるべく、工場を建て、日本など外国へ輸出することを目的としている。
本章では工場を完成させ、いよいよ生産・取引に入ったのだが、ここで立ちはだかる壁があった。生産者と消費者の壁の隔たりである。

4章「されど、コーヒー」
フェアトレードなど様々な課題を抱えながらもアラビカコーヒーの輸出・輸入に向けて突き進んでいる。

私もコーヒーが好きでほぼ毎日飲むのだが、「アラビカコーヒー」の存在も知らなければ、かつてスリランカでコーヒーが生産されていたことも知らなかった。本書で行っているプロジェクトが実りとなるのはまだ先となりそうだが、これを通じてスリランカのアラビカコーヒーが世に広まることを願ってやまない。