看護崩壊~病院から看護師が消えてゆく

現在の医療制度について「医療崩壊だ」と叫んでいる論者も少なくない。現在の医療制度ばかりではなく医療業界でも悲鳴を上げているのだが、その一つには「看護師不足」が挙げられている。

「白衣の天使」と呼ばれる看護師であるのだが、その実態は「過酷」という言葉が似合うほどである。本書はその「看護師不足」や「過酷労働」などの実態、さらには本当の看護師のあり方について迫っている。

第1章「医療崩壊を加速させる「看護師不足」の深刻さ」
日本の医療では「医師不足」が深刻であるが、その陰に「看護師不足」も隠れているという。ではなぜ看護師が少ないのだろうか。
その原因には看護学校の門戸の狭さと離職の多さにある。本書では2006年のデータを用いられているが新卒就業で4.6万人に対し、離職は10.2万人に達している(そのうち半分以上は再就業するが)。
医師や看護師の不足ばかりではない。患者の増加も相俟っての「病床不足」も挙げられる。
「無い無い尽くし」をするだけでもきりがないほど医療業界は深刻な状況に陥っている。

第2章「夜勤と2交代勤務の増加が現場をむしばむ」
医師もそうかもしれないが、看護師の勤務も過酷である。もっとも女性の多い看護師では「出産」にたいして冷遇されるという。
ほかにも「夜勤」の長さも指摘されており、それによる「過労死」や「過労自殺」も相次いでおり、労働・健康の観点でも「危険」と言われているのにも関わらず、それに関する対策が行われいていないと嘆いている。

第3章「制度に翻弄される看護師と患者の悲劇」
医療も制度によって統制されているが、その制度に翻弄されて医療業界も揺れているそうである。元々医師や看護師には国家試験や研修によってはじめてその資格を持つことができる。さらに医療にしても「点数」によって医療費が変わるためそれにより、病院にしても患者にしても受ける恩恵が変わってくる。
医療の内容ばかりではない。地域医療そのものも法や制度により現象の一途を辿っている。

第4章「やりがいと苦悩のはざまでー看護師が消える理由」
看護師の抱えるものの中には、夜勤ばかりではなく、一人当たりの患者数の増加がある。患者の増加もあるのだが、それ以上に病院でのリストラや退職などにより看護師の数も減少しているのだという。
なぜなのだろうか、と本章を見てみると「潜在看護師」という文字が目に浮かんだ。
おそらく看護崩壊における医療の現状の一つとして大いに挙げられるべきものであるが、メディアにはそれについて全くといっても良いほど取り上げられていない。
「医療はビジネスなのか?」
その言葉が脳裏によぎりさえもした。

第5章「命を守るため今こそ看護問題と向き合おう」
看護学校で学ぶことについて細々としたことは不明だが、看護に関する技術ばかりではなく、心構えも学ぶ。前者は現場に行っても発揮されることはあるのだが、現状として後者はどちらかというとなかなか発揮されなかったという声も本書にはあった。
本書は医療問題を訴える本であるが、もっとも本来の看護としてあるべき姿を描いている節もある。本書でも看護師と患者との暖かいエピソードをちりばめられている。
もちろん本章にもそれがある。

医療は果たして何のためにあるのだろうか。医療は「ビジネス」なのだろうか。私はこう言った本に出会う度に常に考えさせられる。ある医師の友人が言っていたのだが「医療は「インフラ」である」という発言をしたのを今でもはっきりと覚えている。まさにその通りである。ビジネスなのかもしれないが、もっともそれらを必要としている人は地方も含めてたくさんいる。国が誇れる医療を目指すこと、そしてそれが地域のみならず私たち国民にとっての大きな「インフラ」となること、それこそが医療の在り方では無いのか、と考えさえした一冊であった。

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