幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~

著者の水野様より献本御礼。
著者の水野氏は現在、作家の傍ら、出版プロデューサーや講演活動などに毎日奔走している。私も水野氏と何度かお会いしたことがあり、水野氏主催のセミナーの中で水野氏の壮絶な過去について聞いたことがある。本書は水野氏の社会に踊らされた過去を、まさに「すべて」明かした一冊と言えよう。

Chapter1「欲望とカネの世界」
水野氏はなぜ借金地獄と呼ばれた過去を直視しようとしたのだろうか、それは編集者の依頼からであった。それを元に「ハウツー」の要素の濃い一冊になるかと思いきや、水野氏自身の過去を直視しながら振り返ろうと考え、自伝的な一冊となった。

Chapter2「こうしてお金の流れは止まる」
著者が社会に出たのは1994年、そしてITバブルとともにベンチャーを立ち上げ、この世の謳歌を楽しむほどであった。ビジネスもお金も十分すぎるほど充実しており、「贅沢」という贅沢をした時代であった。会社もITバブルに乗じて急成長を遂げ、次々に新しいビジネスに触手を広げていった。
しかし「青天の霹靂」という言葉の通り、転落はある日突然起こった。

Chapter3「脱出不能の借金の穴」
ある出来事により会社から追放され、3億円もの借金を背負うこととなった。借金とともにパートナーの裏切り、なによりも社内の人物の裏切りのショックにより茫然自失となっていった。お金とは何なのか、幸福とは何なのか、それを自問自答しながら東京の街をさまよっていた。

Chapter4「地獄で知った「お金のからくり」」
本章にも取り上げあれているが、芥川龍之介の作品に「杜子春」という作品がある。水野氏も「杜子春」の再現の用に二度同じことをしていないが、それに近いものがあった。脱出のできない借金地獄であったが、ある先生の出会いによって一つの光明が見えた。

Chapter5「幸福の商社、不幸のデパート」
本当の意味で「無一文」となった。そして膨大な時間が残った。その中で成功本を読み漁り続けた。そして少しずつ実践していった。やがてチャンスは訪れ、「成功本50冊「勝ち抜け」案内」という本が誕生した。そして作家として道を歩み始め、現在に至る。

最初にも言ったように水野氏の過去は一度だけ聞いたことがある。しかしそれはほんの序の口であった。ITバブルの坩堝に飲まれながら急成長を遂げ、急転直下と起伏の激しい人生を歩んできたからでこそわかるものがある。

「自分の心次第で人は何度でもやり直せる」(p.221より)

いまの社会にそのことを、自らの人生をもとに伝えた一冊である。