死のテレビ実験――人はそこまで服従するのか

私は最近TVを観ていない。つまらないからである。とはいえ大学生まではTVっ子だったため、TVにまつわるエピソードは色々とある。TV番組の中でおバカなキャラクターを嘲たりするような番組が増えているという。以前は「熱湯コマーシャル」などをはじめとした過激番組があったのだが、本書ではそれを遙かに凌ぐほどのTV実験にてTVと服従について考察を行っている。

第1部「テレビは殺人を犯せるか?」
いきなり物騒なテーマである。日本でやれば公序良俗に反するどころか刑法で違反されているため、そもそも放送できない。殺人をネタにするような話をするのも物騒ではあるものの、日本の番組でもそんなこともあった。バラエティーでありながらバイオレンスなシーン、あるいは相手に屈辱を与えるようなシーンも数多く存在する。そのたびにBPOやPTAが抗議をしたり告発をしたりする。
本書で取り上げた恐ろしい実験は実際にフランスにて行われたという。もしも日本でこの実験が行われたとしたら・・・ゾっとしまうどころか、よけいにテレビ離れが進行するように思えてならない。

第2部「テレビへの服従」
「実験」はクイズであるが、出題者は一般人である、もしもそのクイズに間違うと、解答者に対して出題者は電気ショックを与えるものである。それが1問ではなく、20問にもあり、解答者もさることながら、出題者にとっても心的な負担はあまりにも大きい。
電気ショックを与え続けると殺すほどの力を持っているため、まさに「スタジオで一般人が一般人を殺す」ことを行っている。
電気ショックを与え続けることによる異常状態に人はどこまで服従させるのか、あるいはテレビにはどのような権力を持つのかの考察を行っている。

第3部「テレビの暴走」
テレビのみならず、メディアにも「権威」や「権力」があり、そのことによる「横暴」や「暴走」も起こり得る。たとえば「生放送やらせ」に関しても「テレビの暴走」の範疇の一つであり、かつ過剰な「イジリ」や「嘲り」もその一つに挙げられる。「テレビ」という名の独裁者があたかも「空気」の如く人の心をコントロールさせ、そして異常な行動でさえも許容されるように服従させる危険をはらんでいる。

本書の材料として行われた実験は端から見れば非人道的行為のように見える。しかし昨今あるTV番組でも本書のような実験ほどではないが、そういった風潮が世界的にも起こっているのだという。テレビ、そしてそれを観る自分、そして「テレビ」という名の権力とはいったい何なのか、それを見直す「ショック療法」的立ち位置と言える一冊である。