首長パンチ―最年少市長GABBA奮戦記

佐賀県武雄市
齢42を迎える市長がいる。その市長は官公庁、武雄市長の人生の中でまさに「パンチ」を浴びせられ続けた市長であったという。
著者の42年間の半生を綴るとともに、武雄市長としての今後の意気込みと、武雄市の未来への思いも綴っている。

第一章「沖縄のおばあに泡盛をかけられた」
いきなり衝撃的なタイトルである。
著者は大学卒業後、総務庁(現:総務省)に入庁した。しかし慣れない「霞ヶ関ルール」が仇となり、沖縄に出向(見るからに「左遷」という言葉が似合う)する事となった。しかしそこでも沖縄そのものの問題に直面した。そして本章のタイトルである「泡盛事件」も起こった。その背景はまさに昨今の日本そのものの事情がひしひしと表れているように思えてならない。

第二章「官邸から大阪へ」
沖縄出向から戻り、再び官公庁へ、そして大阪へと渡った。そこで「放置自転車」にまつわる対策でネットなどのメディアで鰻登りとなり、一躍「時の人」といわれるようになったのだが、敵も作った。それだけではなく将来の伴侶にも出会ったという。

第三章「最年少市長と佐賀のがばいばあちゃん課」
著者の故郷である武雄市の市長を志したのは2005年末、その翌年には立候補、そして初当選し、当時の最年少市長が誕生した。市長就任当初から市職員や市議会議員との対立が相次いだ、あたかも知事・市長と歴任している橋下氏と同じように。
様々な改革と「佐賀のがばいばあちゃん」のロケ招致活動など精力的に武雄市をアピールしていった。そして武雄市の改革の中で最も大きく、かつ過酷な改革となる市民病院改革に取り組み始めた。

第四章「医師会というパンドラの箱」
市民や国民の生活に密着に関わっていながら、彼らとの距離は完全に離れている、あたかも国民にとって「伏魔殿」のようにも見える「医師会」。市民病院改革はまさに「医師会」との全面対決の様相を見せた。
経営事情が最悪であったため、そこにメスを入れるやいなや医師たちからの猛烈なシュプレヒコールがあがった。そう、本書のタイトルにある「パンチ」を打たれ続けるが如く。

第五章「リコール、そして全面戦争!」
やがて対立は激化し、ついに医師会から市長のリコールが起こった。それだけではない。自民党や共産党などの既成政党も医師会側につき、ついに辞職に追い込まれ、再選挙となった。2008年11月の話である。そいて再選挙となった。市民の民意が完全に二分した修羅場といわれた選挙だったものの、再選を果たした。

第六章「武雄から風を起こす」
再選直後から市民病院改革に尽力した。その中でも対立や修羅場はあったものの、ようやく大筋でまとまった。それでも医師会などの対立は続いている。それも現在進行形ともいえる形で。
武雄市は医療ばかりではなく、様々な課題が山積している。それは他の市町村と同じようなものであるが、今日も武雄市の改革の為に奔走を続けている。

本書の表紙の如くボクシングで打たれ続けながらも改革を続ける樋渡市長。彼は市長をしながら、ブログやTwitterを通じて武雄市の諸々を紹介しているという。武雄市の名物を紹介しているだけではなく、2010年には本書のサブタイトルにある「GABBA」というおばあちゃんボーカルグループのプロデュースをするなどユニークなアイデアを放ち続けている。打たれ続けながらも武雄市は進化を続けている。それが疲弊している市町村の一筋の光となることを夢見て。