道教の世界

「道教」は聞いたことはあるのだが、いざこれは宗教なのか、というと首を傾げてしまう。ちょっと調べてみると、

中国固有の宗教。儒・仏と並ぶ三教の一。不老長生をめざす神仙術と原始的な民間宗教が結合し、老荘思想と仏教を取り入れて形成されたもの。後漢末の五斗米道(ごとべいどう)に起源しているWeblio辞書より、一部改変)」

むしろ宗教と言うよりも「思想」というべきなのかもしれない。本書では、知っているようで知らない道教の世界に誘うとともに、どのように成り立っていったのかを解き明かしている。

第一章「しいたげられた心の救い」
「道教」は人生や職業などの「道」についての教えを説いたものである。
本章ではその「道教」の源となった「老子」が「道」についての教えを説いたことからである。
また「道教」には「儒教」や「神道」に似て「自然観」と言うのがあるのだという。

第二章「転変する世界の肯定」
「キリスト教」は生まれながらにして罪が存在する(原罪)。「道教」にもそれと似ていて、「罪」や「罰」が人生の中で蓄積されるという。しかもその「罪」は生まれ変わったとしても、それへの罰を受け続けるという。「末代まで許さない」という中国大陸にある思想はそこからできたのかもしれない。

第三章「その喧噪のただなかで」
道教の大きな特徴には山岳信仰にある。「仙人」の考え方も道教からきている。

第四章「陰気が陽気を犯すとき」
本章では道教にまつわる伝説を綴った文学や怪異話、さらには灯籠祭りなどの民俗行事などを綴っている。本章のタイトルにあるものは魂にまつわるものであり、魂がいかに孤独なのかを描いている。

第五章「体のなかは虫だらけ」
気持ち悪いタイトルの印象を持つが、これは中国医学における病のことを「虫(寄生虫)」に喩えられているからである。
それだけではなく、この道教がいかに日本文化に影響を及ぼしたのかも柳田国男をもとに考察を行っている。

第六章「十中八九でたらめでも」
日本から見た中国は宗教や文化、さらには法律などが「でたらめ」と言われることがある。
本章では道教研究の歴史や学術について紹介されているが、道教の研究者の中にも中国嫌いな人もいるのだという。

道教は不思議な学問であり思想であり、かつ宗教である。しかし人生における「道」を説くものであれば一度は見てみるべきことを、教えてくれる一冊であった。