世界の食料ムダ捨て事情

皆さんは「食品ロス率」という言葉を聞いたことがあるのだろうか。簡単にいえば食べ物を食べずに廃棄する、とりわけ飲食業界や食品を販売する業界を対象に使われる数字である。
何を言いたいのか、というと本書にも直結しているのだが、食糧を生産しても、私たちの口に入らずに廃棄するケースも多いのだという。かと思えば貧困にあえいでいる地域では食糧を満足に得ることができず、餓死してしまう人も多い。
本書では世界中で起こっている「食品ロス」の事情を追っているとともに、その現状に警鐘を鳴らしている。

第1部
本章ではスーパーマーケットや農場などで棄てられる食糧の現状を写真とともに映している。主にイギリスを中心にしているが、日本でも同様のことが起こっていることを肌身で感じている。というのは、大学生の頃、アルバイトでスーパーの総菜売場を担当していたのだが消費期限のすぎたもの、もしくは売れ残ったものを廃棄することを何度もやったことがある。その度に満足に食糧を得ることができない所を思ったりしていたたまれない感情に苛まれた。
「食品ロス」が起こる現場として、農場やスーパーマーケットだけではなく、総菜食品や加工食品を大量生産する、「食品加工工場」などを代表する製造業、さらには「賞味期限」の現状についても語られている。

第2部
ここでは農場や漁場などの場において、生じる「無駄」についてを追っている。農場では「余剰生産」、漁場では尾びれなど余剰な部分が棄てられるという。
その余剰部分を廃棄せずに再利用させる一例として加工したり、豚などの家畜飼料にするなど、食糧廃棄を防ぐ手段も紹介している。日本でも小田原や相模原で豚用飼料に加工している事例を紹介している。

第3部
今となっては食糧も「バイオマス」など電力などのエネルギー生産として使われることがある。しかし本来食糧は食べるためにあるものであることを忘れてはならない。
とはいえ食糧のリサイクルや再利用という風潮は止まらないのも現実にある。本章では「食品ロス」低減のための一手段としてのそれらを紹介するとともに、韓国や台湾、そして日本での「食品ロス」防止の可能性について解き明かしている。

「食品ロス」についての日本の現状は農業や食品にまつわる本で何度も紹介してきたのだが、これは先進国でも同じことが言えるという。とりわけアメリカやイギリスなどでは日本と同じような状況にある。この現状に私たちはどうしたらよいのか、単純である。「食べ物を粗末にするな」ということである。