空色バトン

本書は「別冊文藝春秋」という雑誌の2010年5月号から2011年3月号までの分を収録した短編集である。

普通短編集は様々な主人公がそれぞれのストーリーを描くため、「一粒で何度も美味しい」というのが多く、そのたびに当ブログでは全体、というよりもとりわけ印象に残った作品を中心に取り上げることが多い。

しかし本書は単なる短編集ではない。本書のタイトルにある「空色バトン」の如くそれぞれのストーリーをそれぞれの色をタイトルに冠している。その色の内訳は

ブラウン茜色パーマネント・イエローパステル(カラー)マゼンダ

となる。しかもそれぞれのストーリーには他愛のない日常を描いており(一部、人物が亡くなるシーンもあるのだが)、これと言って衝撃的なシーンは中々見あたらない。しかし他愛のないストーリーを細かな人間関係を描いており、読んでいくうちにはまっていく印象を受けた。