日本語学のまなざし

「日本語」は歴史とともに変化をしている。しかしその「変化」のあり方そのものが「日本語の乱れ」として蔑視あるいは、批判の的となってしまう。

その日本語の変遷、そして日本語の原理について考察を行うのが「日本語学」であるが、私たちの生活の中ではあまり知られていない。

その「日本語学」は日本語を司る私たちにとって、日本語の進化・乱れを憂うなかで大いなるヒントが隠れているといっても過言ではない。
本書は「日本語学」をはじめて学ぶ人の入門書の一冊であるが、日本語学に興味がなくても、日本語がいかに進化をしていったのかがよくわかるため、それに興味がある人でも適した一冊と言える。

一章「日本語学の「まなざし」」
日本語は「非論理的」や「乱れている」「日本人であることを知らしめるもの」など決めつけられることが多い。
日本語にも諸外国語と同じように各々の地域で育まれた「方言」があり、かつ「日本語の乱れ」は古くは「枕草子」が成立した平安時代の時からあった。
まして言葉はあくまで自分の気持ちや考えを伝えるツールであることから過度な期待や正しいものとして一様に括ることは不可能であるという。

二章「日本語学の「知のわくぐみ」」
学問を「日本語学」から、各国の言葉を比較する「比較言語学」に広げてみる。そこから「日本語」のスタンスや成り立ちなど歴史的な系譜についても論じられている。

三章「日本語学の「知の回路」」
日本語がいかに成り立ったのか、というよりも「日本語によって時代をいかにしてつくったか」という所を論じている。その中で4年前に話題となった本「日本語が亡びるとき」も取り上げられている。

四章「ガイドなのか判然としないブックガイド」
一章から三章までで、取り上げられた本をここで改めて紹介している。章のタイトルのように、紹介だけで終わりというものもあれば、批判的な考察まで述べている所もあり、確かに「判然としない」。

本書は「知のまなざし」シリーズの中の「日本語学」の中からくる「まなざし」と題した入門書である。最初にも書いたように日本語学をはじめて学ぶ人でも、日本語学に興味がなくても「日本語」そのものをみてみたい人にはお勧めの一冊である。