英国王室御用達-知られざるロイヤルワラントの世界

日本では「宮内庁御用達」というものと言える。いわゆるイギリスの象徴と言える「イギリス王室」が贔屓にしている店がいくつか存在しているが、「宮内庁御用達」と決定的に異なる。昨今の「宮内庁御用達」は極端な話どこも名乗ることができるが(かつてそのような制度は存在したが、戦後廃止された)、「英国王室御用達」は「ロイヤルワラント(認定証)」を受ける必要がある。このロイヤルワラントは12世紀ヘンリーⅡ世の時代から約800年にも及ぶ歴史がある。

第一章「英国王室御用達とは」
最初に言ったロイヤルワラントを受けるには厳しい基準がある。一例を挙げると、

・商業、それに関わるサービス企業
(レストランやホテルはロイヤルワラントを受けることができない)
・英国女王、または皇太子の需要が求められるほどの品質を保有していること

などがある。その基準に満たなければ認定は取り消されるため、800年間、御用達の企業は常に流動している。

第二章「クラフツマンシップの継承者たち」
「クラフツマンシップ(クラフトマンシップ)」とは何か。調べてみると、

「職人の技能。職人芸。技巧。」「コトバンク」より)

とある。本書はその名の通り洋服や帽子、靴など、衣類においての職人芸が、王室に気に入られ、御用達とまでなった店を紹介している。

第三章「英国の伝統を現代に伝える老舗」
日本では100年を越えるような企業は数多く存在する。日本だけかと思ったらイギリスにも同じように創業100年、数100年と呼ばれる店は数多く存在する。
その中でも長らく「ロイヤルワラント」を受け続けた店も存在しており、本章は酒・食品・紙製品といったところで長らく英国王室に愛され続けてきた「ロイヤルワラント」の中の「ロイヤルワラント」と呼ばれるような店を紹介している。

第四章「王室お気に入りのイングリッシュテイスト」
英国王室のお気に入りとしてチーズやチョコレート、陶磁器や匙の店を取り上げている。
しかし、もっとも印象的だったのは「ロイヤルワラント」を受けたスーパーマーケットである。日本では安価で日用品や食品を買うことができる印象を持つが、イギリスではスーパーマーケットによって取り扱う品も異なる。ましてやいつも買うスーパーマーケットを言うだけでその人の「階級」がわかるほどだという。特定の階級向けのスーパーマーケットがあることには驚いた。

第五章「英国ジェントルメン文化の担い手たち」
イギリスは紳士・淑女の国という印象が強い。その印象づける店は洋服や革、散髪、薬、エレガンスなどが紹介されている。
イギリスならではと言える店が紹介されているが、本書の付録として日本でも手に入れることができる「ロイヤルワラント」の名品も紹介しており、かつ各章で紹介された店やブランドの一部は日本で購入することができる。

「ロイヤルワラント」という言葉を知らなくてもイギリスのファッションや英国王室に興味を持たれる方は本書を読むだけではなく、日本で手に入れられるブランドを買って楽しむのもまた手である。