僕らはつよくなりたい

今年の甲子園は選抜・夏を通して大阪桐蔭の年だったと言えるほど、強さが際立っていた。とはいえ他の高校も「勝ちたい」「強くなりたい」という一心で戦っていたのが印象的であった。

中でも東日本大震災の災厄にもめげず、野球に青春をかけた東北勢のひたむきさには多くの観客・視聴者に感動を呼び起こしたと言っても過言ではない。
本書は震災から間もない時期に開催された春のセンバツにおいて、強豪・東北高校について追っている。

第1章「夢を追っている途中で」
東北高校と言えば2003年の活躍が印象的である。ダルビッシュ有の迫力あるピッチングで活躍を見せるも決勝戦で常総学院に敗れてしまった。
ダルビッシュはその後日本ハムで活躍を遂げ、MLBのテキサス・レンジャーズに移籍した。
その東北高校は震災の日、いつものように練習をしていたのだが、その矢先に東日本大震災が起こった。
その震災により家族が亡くなった・行方不明になった、家を失った野球部員もいた。

第2章「緊張と葛藤」
そのような状況下で震災前のモチベーションを保つことは至難の業と言ってもおかしくなかった。むしろそのような状況の中で自分たちは甲子園に出る夢を追っていいのか、という疑問さえ持った部員もいた。
それでも監督をはじめ選手は甲子園へ行く道を選んだ。当然決めた後も葛藤と疑問は残っていた。
しかし、それ以上に苦痛だったのは震災の痕でもなく、メディアの好奇な視線だった…。

第3章「甲子園の戦い」
2011年3月23日、春のセンバツが開幕した。普段の年とは違い、外壁の至る所に「がんばろう!日本」の垂れ幕やのぼりが見られた。
とりわけ注目の的となったのが本書で紹介されている東北高校をはじめとした東北代表の高校球児たちであった。
結果は一回戦で大垣日大に大敗を喫してしまった。

第4章「練習より大切なもの」
このセンバツでは神奈川県代表の東海大付属相模が11年ぶり2回目の優勝で幕を下ろした。
敗れた東北高校は甲子園を去り、被災した地元に戻りボランティア活動に勤しんだ。その活動の中で球児たちは野球だけでは得ることのできない大切なことを学んだ。

第5章「恩返しの勝負へ」
ボランティアで育んだ感謝と「大切なこと」
それらを胸にいつも以上に練習に取り組み、夏の甲子園の切符を賭けた宮城県大会まで勝ち進んだ。しかしその努力も空しく敗れ甲子園に戻ることができず、印象的な「夏」は終わりを告げた。

第6章「僕たちの未来」
東北高校にとってまさに「大変」な年となってしまった。夏の甲子園に戻ることができなかっただけではなく、秋の大会でも優勝できず敗れ去ってしまった。そのなかでコーチや監督との衝突も少なくなかった。岐路に立たされた状況にあるのだが、これから「大きく変わる」時期とも言える。

東北高校のみならず、ましてや野球のみならず、この震災への復興のための思いをぶつけた人は少なくない。そのぶつけた思いに対し、私たちはさらなる復興へ進み、大いなる花を咲かせる。その種が本書といえる。