宮台教授の就活原論


これまで社会にまつわる本は多数書評してきた。しかし本書の著者である社会学者の宮台真司氏の本については偶然なのか不明だが一度も書評をしていなかった。かねてから社会学博士の宮台真司についての本を書評しようと思っていた。そこで「シリーズ「『宮台真司』の思考を解剖セヨ!」」と題して、これまで宮台真司の著作をもとに宮台氏の思考経路を解剖していこうと考え、1週間にわたって宮台氏の著作を書評していこうと思う。

その第1弾は昨今話題となっている就職活動についてである。

首都大学東京で2007年より2年間の間、社会学教授を勤める傍らで、「就職支援委員会」の委員長として学生の就職活動を支援した経歴を持つ。
今年12月1日に2014年卒業向けの就職活動の説明会が解禁された。博報堂では解禁日の午前0時ちょうどに会社説明会が開始されたこと、さらにはリクナビやマイナビではサーバダウンが起こるなど話題となった。現在の大学3年生、もしくは大学院1年生はこれから厳しい就職戦線に立つだろう。
ちなみに私も6年前は、今の大学3年生と同じような状態であった。そのエピソードについては他の就活本で書いたので、ここでは割愛するのだが、その就職活動をするに当たっての心構えとして、2年間就職活動を支援した中で見えてきたものを大学生に向けて語った一冊である。

第1章「なによりも”適応力”が求められている」
そもそも「就職活動」は何のためにあるのか、そして採用をする会社は何を求めているのだろうか。一言にいえば「社風にあった人格」だが、学生側からはあまり「ピン」とこない。しかし「その会社に適応する能力」があると「企業研究」は必要とはいえど、ある程度理解はできる。
「企業研究」がいかに大切か、というのがよくわかる。

第2章「仕事は自己実現の最良の方法ではない」
「自己実現」は簡単にいうと、仕事など様々な手段を通じて自分の夢を叶えることを指す。
しかし仕事だけでは自己実現をすることができない。社会そのものが絶えず変化するのと同時に企業も変化を生じる。いくら自己実現をしたとしても、明日できなくなることさえあるのだ。

第3章「自己実現より”ホームベース”を作れ」
自己実現が無理だとしたら「仕事」に何を求めればよいのか、という疑問が沸いてしまう。
著者は「ホームベースを作ること」にあるのだという。「ホームベース」は本章の言葉を借りると、

「感情的な安全を保証する場」(p.76より)

をいう。精神的な話となるが、精神面で落ち着ける場所、もしくは仕事を指しているが、大概は家庭や地域のことを指すことが多い。
その「ホームベース」も「ワーク・ライフ・バランス」がなければなし得ることさえかなわない。しかし昨今の社会や企業はそれが難しいという。ただ個人に「ワーク・ライフ・バランス」を行うことによって伝搬する事は可能である。

第4章「自分にぴったりの仕事なんてない」
「自分に適職はあるのか」
就職活動のときに大学生は何度もそれを問いつめ、適職診断を行ったことは一度や二度はあるだろう。かく言う自分もそれを行ったことはあるが、自分自身「SEをやりたい」という一点張りで就職活動をしていたため、参考程度にしてあまり結果に左右しなかった。
その適職診断は結局「幻想」にすぎない。適職かどうかは仕事をしなければわからないことであり、ましてやそれすらも「ない」。
適職は「見つける」ものではなく、むしろ「作られるもの」であるのだから。

第5章「CMと就職情報サイトに踊らされない仕事選び」
私が就活生だった時代もそうであるが、就職情報サイトは数多くあり、10~20ものサイトに登録を行い、就職活動を謳歌している大学生もいる(かく言う私もその一人だったが)。
そういった就職情報サイトに踊らされている人も就活生をみると少なくないのだが、果たして就職活動サイトが正しいかというとむしろ文脈が誇張されているため、踊らされている要因としてある。
ではどのように仕事を選ぶべきか、それは「社会的に正しい」企業を選ぶ、もしくは中小企業を選ぶことを提示している。

第6章「就職できる人間になる”脱ヘタレ”の心得」
就職活動において内定をとりまくる学生とそうではない学生の違いは何なのか。著者が両学生をみてきた中で「実績があるか無いか」の違いだという。「実績」は学生生活の中での活動をする、たとえば自治会の会長として何の改革をしたのか、あるいは仲間たちとイベントを企画し、成功させたというのもある。
それだけではなく、本章では著者が出会いを震撼・感染させた「スゴい人」も紹介している。自分としては後者のインパクトが強く、自分も逢ってみたい気持ちになってしまう。

第7章「社会がヘタレを生んでいる」
第6章で言い忘れていたのだが、実績づくりこそ「ヘタレ」脱却の一つである。自分自身の限界まで挑戦する事ができたこと、不特定多数の人とのコミュニケーションを行うことができることなどにある。
しかし社会そのものが「ヘタレ」を生み出している。簡単に言えば部活動やサークル、研究会活動における「グループワーク」を行う力が欠如していることが大きな要因とされているという。
その「グループワーク」で思い出したのだが、企業によっては採用活動のなかで「グループディスカッション」や「グループワーク」が課されているところもある。それは「プロジェクトという集団のなかで仕事をする」能力を測るために行われている。
しかし、その「グループワーク」ができない人間が増えている要因として、「部活動」や「サークル活動」に参加しない、もしくは集団活動の重要性を教えない教育にも問題があると指摘している。

第8章「すぐには役立たない就活マニュアル」
「就活マニュアル本」は書店に行けば年中置いてある。私も就活本を購入して、読んで、実践した経験はあるのだが、役に立たない本が多かったように思えてならない。
本章の話に戻す。就活マニュアルを完全否定するつもりはないのだが、それを実践する以前に会社の特性や自分自身を知ることにある。その重要な一手段として「OB訪問」がある。

そもそも就活している皆さんは「何のために就活をしているのか」を見直す必要がある。就活が始まった時期であり、「もう遅い」というイメージがあるのだが、むしろこの時期だからでこそこれから就活を始める方々、来年・再来年と就職活動を控えている人に対しては「読むべき」一冊である。「就活」そのものの考えを見直し、学生生活そのものを見直す大きなきっかけとなる。

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