パトロネ

本書のタイトルにある「パトロネ」は、フィルムに納められている円筒の缶を指している。最近ではデジタルカメラが増えてきているせいか、フィルムと同じようにあまりみられなくなったとも言える。しかし古くからの写真愛好家にとってはフィルムカメラの感触と映し出される写真の味わいが忘れられず使用している人も少なくないのかもしれない。

私自身もプライベートで写真を撮ることはあるのだが、大概は携帯電話のデジタルカメラ機能を使用している。写真を撮るのがおもしろくなり、中古でもよいからデジタルカメラを買いたいという願望があるのだが、吝嗇癖が強いせいか購買には結びつかない。
私事はさておき、本書の舞台は大学のサークルで写真部に入ったところから物語は始まる。

フィルムカメラと写真にまつわる話が中心であるため、取っつきにくいイメージがあったのだが、フィルムカメラそのもの、あるいはフィルムからの現像に至るまでのプロセスや用語についてストーリーを交えながら分かりやすく解説しているため、写真撮りから現像までのプロセスが自分でも行っているかのようにすんなりと頭に入る。著者が「美学」「芸術学」を専攻していた経歴があり、その中で写真も学んだせいなのかもしれない。
さらに、「色」についても拘りが強いように見える。写真の映像のみならず、表情についても様々な「色」を多用している描写が多かった。