昆布と日本人

昆布と日本人は切っても切れないものである。鍋のだしにつかわれることもあれば、醤油の原料に使われることもある。お茶として飲まれることもあれば、「乾物」の珍味として食べられることもある。

日本の料理の中の「核」としても愛されている存在であるが、その昆布はいかにして、もしくはどのようにして愛されているのだろうか。そして国外は昆布をどのようにしているのだろうか。本書は昆布のスペシャリストとして、昆布のイロハについて解き明かしている。

第1章「昆布が礎となった日本の近代化」
昆布は当初から、蝦夷地(北海道)の主産物の人であり、アイヌ語にも「KONPU」が挙げられるほどである。
その昆布は大坂(大阪)を経て中国大陸へと貿易の要として扱われた。江戸時代の時であり、このときは「シルクロード」に倣い「昆布ロード」と名付けられた。
この「昆布ロード」が日本の貿易や経済の近代化の糧となった。

第2章「昆布商の140年」
著者が主人として勤める「奥井海生堂」の創業は1871年、ちょうど140年を迎えた時に本書が出版された。「奥井海生堂」は当初、曹洞宗の総本山である永平寺などの寺院の御昆布司(おこぶし:昆布専門の御用商人のこと。宮内庁や寺院など御用達の商人や商店を指す)をつとめている経歴を持つ。
その140年ある歴史の中で4代にわたって御昆布司を受け継がれているが、本章ではその4代のエピソードをそれぞれ紹介している。

第3章「昆布とワインの意外な共通点」
「昆布」と「ワイン」
一見関連性が内容に見えるのだが、この2つには共通点があるのだと著者は語る。
例えば「産地」、「年季(ヴィンテージ)」などが挙げられる。

第4章「永平寺の御昆布司」
第2章にも書いたように、「奥井海生堂」は創業当初、永平寺の御昆布司をつとめている。その永平寺に御昆布司としてつとめた時のエピソードを絡めながら永平寺の歴史としきたりについて紹介をしている。その中には昆布でしか語ることのできない「食」のエピソードも含まれている。

第5章「母乳と同じ「うま味」がある」
昆布には独特の「うま味」があり、その成分は「母乳」に似ているのだという。その要因として「グルタミン酸」の含有量が来ている事を挙げている。
それだけではなく、本章ではグルタミン酸以外で、昆布に含まれている要素を紹介しながら、「昆布は体にいい」と言うことを証明している。

第6章「世界の美食の舞台へ」
著者は日本の食文化としての「昆布」の発展のみならず、昆布の良さを世界各地に伝える活動を行っている。その一つとしてフランスに行ったときのエピソードを紹介している。

一つの世界を掘り下げてみると、奥が深くなる。昆布もその例外に漏れず、昆布の種類だけではなく、年代によっても味や深みが異なることは自分にとっても新発見である。「昆布」だけでも種類や年代もあれば、それだけ使われる料理にも幅は広がる。「昆布」だけで語っても語り尽くせないほどの魅力、それが本書には詰まっている。