水平線の歩き方

本書は小説ではなく「脚本集」である。「集」であるのでいくつかの脚本が収録されているが、本書は選りすぐりの3本取り上げている。

<水平線の歩き方>
本書のあとがきにも記しているが、著者の50本目の節目となる作品である。ちなみにこのタイトルの舞台演劇も2008・2011年の2回上演されている。
本作の冒頭を見ると、あたかも「ホラー」と思わせてしまうようなところから物語は始まる。
「ホラー」であり、「日常」の中の「非日常」が入っているようなストーリーでありながら「家族」や「友情」、そして「命」について考えさせられる作品である。

<ポケットの中で星がいっぱい>
本作は2005年に上演されたものである。
あたかも「タイムマシン」のような時間移動装置を使って過去の自分と現在の自分と出会い、そしてその中で生まれる「ドタバタ」を描いている。約16年の間を行き来しているのだが、その中で「変わったもの」「変わらないもの」を映し出している印象が強かった。

<クローズ・ユア・アイズ>
ある画家は死期を迎えたが、彼は死を迎えることを拒んだことから物語は始まる。本書のタイトルにある「水平線の歩き方」と同じような傾向にあるのだが、本作はそうではなく、「すでに死んだ人」ではなく「これから死ぬ人」をフォーカスしている。
「死んでも死にきれない」という言葉がぴたりと似合うように、未練を残したまま死ねず、むしろやり残したことを追い求めた。そしてそれを追っていく中で、最愛の人との出会いがあった。

本書で取り上げた3本の作品はいずれも上演されているものである。作品一つ一つの性格は違い、かつ自分自身その舞台は観たことがない。それでも脚本を観ているだけで、その舞台の映像は自分の頭の中ではっきりと映し出すことができる。それでいて、生きていく上での「本質」というのを学ばせてくれた一冊と言える。

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