フグはフグ毒をつくらない

フグと言えば高級食材として、「てっさ」「てっちり」などの料理が存在する。
その一方で「テトロドトキシン」と呼ばれる「フグ毒」が肝臓に存在するとよく言われる。
しかしフグと一重に言っても様々な種類があり、また「フグ毒」も様々な生物に存在していることが明らかになった。

本書はフグ毒とフグの関係、そしてフグ毒の使い道について「フグ毒=フグ」という常識を取り除きつつ、解明している。

第1章「フグ毒はどこにある?」
フグには様々な種類がある。日本近海に生息しているものもいれば、中国やタイの近海に生息しているものもいる。
日本近海に限ると、30種類存在する。その30種類の半数以上は猛毒、あるいはそれに近い毒性を持つものもいれば、ハリセンボンやハコフグのように無毒のフグも存在する。

第2章「フグ毒をもつ生物」
フグ毒は何もフグ特有の毒とは限らない。他の魚介類や爬虫類にも同様の毒を持つ生物は存在する。本章では「ハゼ」「イモリ」「カエル」「タコ」「カニ」「モミジガイ(ヒトデの仲間)」などが挙げられる。これらと第1章で述べた「フグ」を含めなぜ「フグ毒」を持つ様になったのか。それは回中にある「フグ毒」をつくる細菌が存在するのだという。

第3章「フグ毒の謎を解明する」
最初にフグ毒は「テトロドトキシン」とはいったいどのようなものか。調べてみると、

「フグ(属名テトロドン)毒の主成分。呼吸や感覚の麻痺をおこす。海生の微生物に由来し、フグの体内に蓄積される。鎮静薬として神経痛の治療に用いることがある。ある種のカエルなどにも見出される。」「広辞苑 第六版」より)

とある。「神経毒」と言われており、死に至るような毒である。ただ毒性の強さは強い部類に入るのだが、ボツリヌス菌の毒や破傷風菌の毒に比べると弱い。
またフグなどがなぜ「フグ毒」があるのか、と言う理由として「狩り」や「自分のみを守る」ために毒を身につけている。

第4章「毒のないフグを育てる」
高級食材に代表されるフグだが、養殖フグも存在しており、その中で「毒のない」フグもつくられている。本章ではその養殖方法の他に「毒のない」フグの肝の味と流通の難点について示している。

第5章「フグを食べる -養殖フグと伝統料理フグ肝の復活-」
フグの中にも「食用」になるフグもあれば、食用が禁止されているフグが存在する。しかしその食用の多くは「筋肉」のみであり、皮や内臓を食べることのできるフグは僅かしかない。
またフグの「肝」の内臓が禁止された歴史、そして現在では各都道府県知事の許可がいる「ふぐ調理師免許」についても言及している。

第6章「巻貝とフグ毒中毒の関係」
ここではフグから少し離れて、巻き貝から来る「フグ毒」について述べている。

第7章「フグ毒の使い道」
「「毒」をもって「毒」を制す」と言う言葉があるように、フグ毒は使いようによって治療薬に使われる。第3章の引用文にも書かれている通り、鎮静剤や神経痛の治療薬に使われる。また「惚れ薬」としても用いられるという。

魚離れが進んでいるのだが、その中で高級食材のフグの人気は未だ根強い。その一方で「フグ毒」と呼ばれる毒があることにより、躊躇している人も少なくない。しかしフグによって「無毒」のものもあり、食べることのできなかった部位も食べることができる様になってきたという。「てっさ」「てっちり」だけではない、新たなフグの食べ方もあれば、フグそのものの奥深さを知るための格好の一冊と言える。