電車のしくみ

首都圏や大都市圏は通勤・通学をする場合、大概電車を使う。私の出身地である旭川では隣町といった遠方を除けば、バスが一般的だったため、通勤電車は珍しかった。今となってはほぼ毎日のように電車に乗る。

その「電車」はどのような仕組みで運転をしているのだろうか、そのメカニズムを紹介している。本書の表紙にもあるように身の回りにある家電製品にも共通しているものもあるため、親近感を増すようにつくられている。

第一章「電車を体感しよう」
「電車を体感する」というと10数年前に一躍ブームとなったアーケードゲーム・テレビゲームの「電車でGO!」を連想してしまう。
しかし本章ではそのほかにも「電車に乗る」、「電車の整備工場や車両基地を見学する」と言ったことも勧めている。
実際に運転することはできないのだが、「疑似体験」という形であればゲームのみならず実物を見学することでも可能である。

第二章「鉄道模型を動かす」
鉄道や電車の構造を知るには実物を見ることが一番理解しやすいのだが、それらに携わっている人でない限り毎日のように触れることは難しい。それを解消するために「鉄道模型」を本章にて勧めている。
「単なるオモチャ」と思ってはいけない。鉄道模型はミニチュアでつくられているが、構造そのものは本物に似ているように精巧に作られているため、電車や鉄道の構造を知るためにうってつけのものである。

第三章「電車を動かす」
鉄道模型などで疑似体験をする事ができたら、いよいよ実物…と行きたいところだが、第二章でも書いたように時間に限りがある。そのため本章では電車の構造をもとに文章にて疑似体験ができる。最初として電車を動かすための構造をモーターやそこにかける電圧を中心に取り上げている。

第四章「電車を停める」
電車を停車するにも構造がある。もっと言うと停車としても各駅に停車すること、あるいは事故や信号による緊急停車などがある。それぞれの「停車」は構造が異なっており、自動的かつゆるやかにブレーキするものもあれば、手作業でフルブレーキをする、電流を使ったり、機械そのものを利用したりするなど、ブレーキをするにも様々な方法がある。

第五章「乗り心地をよくする」
電車を動かしたり、停めたりするのだが、それを行うにあたり「乗り心地をよくする」工夫がなされている。本章では「駆動」や「継手」といったものを中心に紹介している。

第六章「消費電力を減らす」
東日本大震災を機に、鉄道のみならず、様々な所で「節電」が行われている。これから暑い夏を迎えるわけだが、「冷房」の設定温度を引き上げる、照明を減らすなどと言った「小さな所」から節電を行うキャンペーンが大々的に開催されることだろう。
電車は首都や大都市を中心に欠かせないインフラの一つとして取り上げられるが、その電車にも節電のための工夫も行われている。それは電車の中にある様々な「制御システム」が挙げられるのだが、本章ではその「制御システム」について取り上げている。

第七章「故障原因を減らす」
電車は永遠に使えるものではない。時折「故障」をすることもあり、それが私たちの通勤や通学に支障を来すときさえある。その故障を完全に撲滅することはできないものの、最小限にまで減らすことは可能である。それを「性能を上げる」と定義されるのだが、本章ではその工夫について紹介している。

おそらく日本ほど性能や品質など求められ、応えている電車は無いと思う。外国を見てみると、ドアを開けながら電車を走らせている国もあれば、ことある毎に爆発するような国さえある。ちょっとした事故でも目くじらを立てられながらも、常に時間に正確で、かつほとんど事故も起こらない電車は珍しい。しかし私たちはそれに対する「感謝」が薄れ、それが「当り前」になっていることさえある。本書は電車の仕組みを知るとともに、今電車が動いていることへの感謝への気持ちを募らせる一冊と言える。