焼肉の文化史~焼肉・ホルモン・内臓食の俗説と真実

最近では健康食がもてはやされる中であっても、「焼肉」の人気は止まるところを知らない。
しかし、この「焼肉」の文化はいつ、どこから誕生したのだろうか。本書は文化とその歴史について追っている。

1.「焼肉って何だ」
そもそも「焼肉」とはいったい何なのだろうか。調べてみると、

「牛・豚などの肉をあぶって焼いたもの。」「広辞苑 第六版」より、ただ「鶏肉」を焼いたら焼肉と言えるのでは?

とある。
しかしそれだけではない。朝鮮半島の料理でも「焼肉」を指しているのだが、焼肉そのものは「朝鮮半島」の料理である一方、中国大陸など様々な国々で「焼肉」は存在する。

2.「朝鮮半島の焼肉の歴史」
その中で本章では「朝鮮半島」にフォーカスを当てる。朝鮮半島における「焼肉」といえば「プルコギ」を連想する。そのプルコギが誕生した歴史、それは中国大陸の歴史と共に発展していったのだという。

3.「日本の焼肉とホルモン料理」
日本の焼肉文化が誕生したのは文明開化あたりと言われている。元々仏教の影響から「肉食」の文化は忌み嫌われるものだったからである。
ただし「肉食」すべてが禁止されていたわけではない。禁止されていたのは牛や豚、馬などの肉であり、鶏肉は対象外だった。もっと言うとウサギも「鳥」の一種と言われ食べられていたという。
文明開化が行われてからは「牛鍋(すき焼き)」や内蔵食などが食べられるようになった。

4.「“焼肉”を考える」
「焼肉」のなかから「内蔵食」についての諸説を解き明かしている。「内蔵食」というとあまりピンとこないのだが、
「ホルモン」や「ミノ」「ハツ」「タン」など料理のことを表す。昨年・一昨年には「クッパ」や「レバ刺し」などによる食中毒事故があり、食べる機会はほぼ皆無になってしまった。

5.「“焼肉”の日韓関係」
元々韓国(朝鮮半島)では肉食文化はあったのだが、肉の消費量は少なかった。その理由は簡単で当時「焼肉」は特権階級などの支配層の食べ物だった。
それから庶民が食べられるようになったのはちょうど日本で文明開化が起こった時代であるため、消費量の推移は日本と大差ない。

6.「ホルモン料理を見つめ直す」
今となっては全国津々浦々で「ホルモン料理」が食べられる、相模の「シロコロホルモン」の用にB級グルメとして親しまれているものもある。
その「ホルモン料理」について商標登録の変遷とともに、「ホルモン料理」とはいったい何なのかを解き明かしている。

7.「日本の内臓食を掘り起こす」
日本における「内蔵食」についてを紹介しているが、この「内蔵食」は文明開化とともに誕生し、様々な用途で愛された。その「様々な用途」は「食用」もあれば、「薬膳」として使われてものも含まれる。

8.「“焼肉”の起源再考」
「ジンギスカン」というと北海道出身の私にとって地元の食べ物という認識がある。よく言われる「ジンギスカン鍋」のことを言われているが、その「ジンギスカン」について朝鮮半島や中国大陸、東京、北海道と進化の仕方は異なるという。本章ではジンギスカンをはじめとした「異なる起源」について分析をしている。

9.「焼肉と内臓食[総論]」
これまで「内蔵食」や「焼肉」など諸説あるもの、あるいは朝鮮半島や中国大陸など国別の歴史や文化について分析してきたが、本章では「まとめ」の位置づけとして取り上げている。

健康食がもてはやされ、肉食に関してネガティブなイメージが存在する。しかしごちそうとしての「焼肉」は現在でも重宝されているが、その文化の変遷は諸説あり、解明できていることも少なかった。本書はその解明できている文化のイロハを解き明かしてくれる一冊である。