理想の書店―高く掲げよう「お客さま第一」の旗

私は毎日のように書店に足を運ぶ。書評家の性なのか、それとも本好きの性なのか、それは定かではないのだが、気がつけば書店にふらっと足を運び、その中で色々な本や雑誌と出会う。あたかも「偶然の出会い」を演じているかのように。

店員でもないのに毎日のように本と出会うのは、自分自身ある種の「変態」とも言える。

それはさておき、出版不況と呼ばれるような時代である。その時代の中で小さな書店の倒産が後を絶たず、丸善や紀伊國屋、ジュンク堂や有隣堂といった大型書店の全国展開も続いている状態にある。家電量販店がそうであったかのように。もっというと全国の市町村のうち約17%には「街に書店がない」という状況に陥っている。そのため「本屋」としての在り方を考え直す必要があり、現に本屋を元気にするプロジェクトも進められている。

本書は「理想の書店」を目指すべく、書店の品揃えや店員と客の接点をいかにして近づけるかということを実践した書店を紹介している。

第1章「理想の店づくりを目指して」
著者の言う「理想の書店」とは何か。
それは店それぞれの考え方によって異なるのだが、それをもとに「お客さま第一」の両輪で挑戦し続けることは共通しているのだという。
本章では読書の空間を演出する、店員とお客さまとの接点をつくる、読者やお客さま目線で売り場作りをするといったチャレンジを行っている書店を6店舗紹介している。

第2章「理想の多様性を追って―6年間のマイ・メモランダム」
著者は6年以上にわたって様々な書店を渡り、「理想の書店」とは何かを追い続けた。「書店」を一括りにしても、大型書店や近所にあるような小さな書店、さらには大学の生協にある書店まで網羅されている。

第3章「理想の書店―イハラ・ハートショップの戦い」
理想の書店を目指すべく戦う書店が存在する。本書ではそれを代表して、和歌山県の山奥にある「イハラ・ハートショップ」という書店を取り上げ、様々な提案や実行を行いながら「理想の書店」を築き上げるためのチャレンジを追っている。
その書店の「理想」は「売り上げ日本一」だった。

第4章「理想のジャンルづくりに挑んで―売場革新の狼煙を上げる」
書店全体だけではなく、一ジャンルだけ「売場革新」を行い、それが伝播することによって「理想の書店」に限りなく近づくための戦略について取り上げている。
「理想の書店」を目指すことによって衰えていった活気を取り戻し、書店そのものも活気を産み出すことができる。

売場は進化をする。その進化は様々な角度をもって、変わることによって生き残ると共に、活気を取り戻すことができる。生存競争と同じようなものは書店も例外ではない。だからでこそ書店は今、変革や進化を強く求められている。