記憶をコントロールする――分子脳科学の挑戦

「記憶」とは実に不思議なものである。その記憶は時が経つにつれ忘れて行き、思い出したとしてもあやふやなものになってしまう。繰り返し覚えたとしても、覚えることを繰り返さなければ、覚えられなくなってしまう。

「記憶」はあやふやに覚えてしまうと、コントロールされてしまい、記憶そのものも都合のよいように作り替えられてしまう。

本書は「記憶」にまつわる研究について「短期記憶」「長期記憶」などを中心に素朴な疑問に答える一冊である。

1.「記憶はどこに蓄えられるのか」
脳で「記憶中枢」と呼ばれるものとして「海馬」がある。よく脳研究にまつわる本屋やTV番組でも度々取り上げられているが、その海馬に記憶されるところで「陳述」と「非陳述」の二つに分類されている。

2.「記憶はどのように蓄えられるのか」
記憶が蓄えられる仕組みは、未だに解明されていないのだが、「セルアセンブリ仮説」という形で仮説を実験とともに紹介している。

3.「遠隔記憶のナゾ」
「遠隔記憶」とは数年、数十年前の記憶のことを言い、大人であれば子供の頃の思い出のことを指すことが多い。
記憶は一度覚えると、一定時間で忘れてしまうのだが、思い出のようにいつまでも記憶に残っている理由について本章にて考察を行っている。

4.「記憶と遺伝子の関係」
「記憶力が良い」「記憶力が悪い」の違いはいったいどこにあるのだろうか。そもそも「良い」「悪い」の違いですら、どのようなものかわからない。本章ではそれらについて「遺伝子」や「シナプス」との関連性について考察を行っている。

5.「記憶はどのようにして正確に保持されるのか」
記憶を正確に保持される方法というよりも「メカニズム」を「シナプス」とともに解き明かしている。記憶の関連性が深いものとして「シナプス」があるという。

6.「思い出した記憶は不安定になる」
記憶で思い出すと、うろ覚えのような記憶、もしくはあやふやで「不安定」な記憶になってしまうことがある。コントロールによっては「記憶を美化する」というようなことにもなる。本章ではそのメカニズムについて「アップデート」とともに紹介している。

脳科学はもちろんのこと、記憶に関してもいまだ解明できていないものが多い。本書は解明できていないなかで最新の仮説をもとに解き明かしているのだが、記憶はいったいなんなのか、わからない部分も多く、かつ、これから解明されるのか同化も不明である。その奥深さを知らしめる一冊であったと思う。