アメリカ黒人の歴史 – 奴隷貿易からオバマ大統領まで

アメリカでは白色・黄色・黒色も含め、様々な人物が存在している。その理由は明白でイギリスなど各国からの移民を受け入れているからである。

その中でも黒人にあたる人種は戦後間もないときまで社会の底辺におり、差別され続けてきた。アメリカ黒人はまさに「不遇」の歴史から世界的に認知される革命を起こすようになり、そして平等を手にした。

本書はアメリカ黒人の歴史を政治、社会、スポーツなど様々な角度から分析するとともに、今もなお残る諸問題とは何かについて迫っている。

第一章「黒人奴隷制共和国アメリカ」
中世・近世ヨーロッパの時代、黒人は奴隷として雇われた。しかし、そのような状況も18世紀にイギリスで「奴隷貿易禁止運動」により黒人たちが立ち上がった。
一方のアメリカは、独立国になる前であり、黒人奴隷の文化は残っていた。その後独立戦争が行われ、黒人奴隷は解放されるようになった。

第二章「南北競争から「どん底」の時代へ」
独立戦争がおわり、イギリスなどからの移民が受け入れられるなかでまた戦争は行われた。「南北戦争」である。奴隷解放を掲げる連邦軍が勝利したものの、「奴隷解放」は実ったものの、社会的に底辺におり、白人からの迫害の的となった。

第三章「大恐慌・第二次大戦期の黒人」
時代は20世紀へと進み、ブラック・サーズデーからくる「世界恐慌」の中で黒人差別は労働のみならず、政治、軍隊の世界でも差別されるようになった。しかし黒人でも政治や軍隊の世界に進出するようになったのは、一歩だったのだが、「平等」とはかけ離れたものだった。

第四章「冷戦下の公民権運動」
第二次世界大戦が終焉し、やがてソ連との「冷戦」が始まった。その頃も人種差別はあったのだが、ここから黒人による運動が盛んに起こった。
一つは公民権運動としてローザ・パークスによる「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」がある。これは1955年春にモンゴメリーと言うところで起こった事件である。
さらに、1960年にはグリーンズボロと呼ばれる所で黒人の学生たちが簡易食堂での座り込みを行った。
そしてもっとも大きな闘争は1963年の「バーミングハム闘争」だった。黒人大衆が非暴力で直接運動を起こしたが、KKK(クー・クラックス・クラン)と呼ばれる保守勢力とリベラルな勢力との紛争もあいまって、5000人以上にも及ぶ逮捕され、死者まで出した。時の大統領であるジョン・F・ケネディも動かざるを得ず、6月11日の「ワシントン行進」で大統領らが平等主義を訴えた。その中には「I have a dream」という演説をおこなったキング牧師もいた。

第五章「脱人種「白人保守革命」の時代」
しかし、時代は残酷にも「ベトナム戦争」により、目眩ましにされた。ケネディ大統領が暗殺され、キング牧師も暗殺され、「白人保守」の時代が到来した。その間の1966年にはメキシコオリンピックにおける「ブラック・パワー・サリュート」が起こったことも付け加えておく必要がある。
その一方で文化の面で「黒人文化」は世間に浸透するようになった。ヒップ・ホップゴスペルなどの文化が席巻するようになっていった。

第六章「「分極化」と「多様化」の時代」
今でもアメリカでは移民の受け入れを行っている。しかし多文化や分極化によることの弊害も起こっている。人種差別や対立、さらには日本以上の「格差」などがある。

アメリカにおける文化ははっきりとしていながら「複雑」な歴史を辿ってきたと言っても過言ではない。本書は黒人の歴史だったのだが、アメリカ人のなかには白人もさることながら、ヒスパニックと呼ばれる原住民、アジア系の移民もいる。その方々の歴史をたどっていくと、複数ある線が一つの束となり、それがアメリカの歴史ということを築かせている。本書はそのなかでも「不遇」の時代が多かった黒人の歴史がつまっている。