特別支援教育 – 多様なニーズへの挑戦

日本には「小中高大」とよばれるような学府の他にも専門学校や各種大学校など様々な教育機関が存在する。

本書では中でも先天的・後天的関わらず、知的をのぞく様々な障害者のための教育として「特殊支援教育」を紹介している。

「特殊支援教育」を通じて、教育の在り方やニーズの多様化についても本書にて言及している。

第Ⅰ部「特別支援教育の誕生と始動―現在を見つめる」
「特殊支援教育」そのものの定義は、政府の見解として、

「従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うもの」(本書p.21、及び「文部科学省が設置した調査研究協力者会議の最終報告(2003年3月)」より)

とある。
特殊支援教育そのものの変遷も、障害者による定義が法整備同じようにたどっており、特殊支援教育のシステムにしても、地域・学校・家庭・障害の重度などフレキシブルな対応ができるようなものになってきている。

第Ⅱ部「特別支援教育が始まるまで―歴史から学ぶ」
以前「出前授業、いらんかね」という本で、養護教育、及び特殊教育そのものの歴史について考察を行ったのだが、日本における「特殊支援教育」の歴史は、日本の近代教育の歴史の長さと程近い。しかし「特殊支援教育」そのものが充実し始めたのは1979年に入ってからのことであり、それまでは障害そのものの認知もほとんどされていなかった。
また、「特殊支援教育」の歴史は、障害の「差別」との歴史もある。よく放送などで「差別用語」が出てくることはあるのだが、ヒステリックに対応されるようになり、障害に対する用語の変化もあれば、扱われ方も変わってきた。

第Ⅲ部「特別支援教育の進化の兆し―将来を展望する」
「福祉国家」と呼ばれるような国は北欧を中心に充実しているのだが、日本も先進国ながら教育や施設などの「バリアフリー」は積極的に推進している。特殊支援教育もまた然りであり、著者が特殊支援教育を行った場所である神奈川県と兵庫県を代表例として取り上げている。

日本は特殊支援教育など、特殊な状況に置かれた子どもたちのための教育は、先進国と比べても充実しているのだが、それでもまだ足りないところ、充実しているところはあっても、課題は山積している。その課題や足りない所をめぐって裁判にかけられたり、法整備でも紛糾したりすることがある。私たちにできることは何か、私たちの知らない「特殊支援教育」の現状を本書なり、様々な体験を通じて知るべきではないのだろうか、と思う。