動物たちの反乱

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今となっては鳴りを潜めているが、高度経済成長から失われた10年あたりくらいまでは郊外の「再開発事業」により、森や山といった自然が切り崩され、自然破壊・生態構造の崩壊が起こった。特にシカの食害やクマの出没などが地域ニュースなどに取り上げられ話題となるほどである。
かつては人と動物はともに共存をしており、「ギブ&テイク」の関係で成り立っていたのだが、その関係がいかにして崩れ、「敵対関係」と見られるようになったのか、本書は日本における人間と動物との関係の現状について迫っている。

第一章「野生動物の反乱」
野生動物の反乱をあげると、イノシシ・クマなどでは人を襲う、あるいは人里に出没する被害が起こっている。シカの他にリスなどの小動物の場合は木々や農産物における「食害」が発生している。
しかしなぜ反乱なのか、というと人間側の開発により、食糧資源の場が失われているための復讐からとも見て取れる。

第二章「里山とは何か」
元々日本は、四方に海がある「島国」であるのと同時に、今年世界遺産に登録された霊峰・富士山をはじめ、多くの山々が存在する「山国」であった。
その山々の多くは木々で覆われており、様々な山菜や木の実があり、動物たちの食糧源となったのだが、燃料の確保やスギやヒノキなどの、いわゆる「有用材」が植えられ始めたことから里山のバランスが崩れたのだという。

第三章「ワイルドライフ・マネジメント」
「ワイルドライフ・マネジメント(wildlife management)」は日本語訳すると「野生動物管理」と言われており、現在生息している動物たちと共に生きるか、あるいは餌となる資源などを管理していくという考え方である。これについては現在国・市町村・民間でも行われているのだが、課題も山積している。

第四章「ニホンザルの被害はなぜ起こるのか」
ニホンザルは元々山に生きる動物であったのだが、動物園でも暮らし始め、脱走して都市に逃げ込み、迷惑をかけるという事例も存在する。その原因は「食性」や「人慣れ」など様々な角度から「変化」を起こしているところにある。

第五章「シカと向き合う」
私は現在、鎌倉に住んでいるのだが、年一回、故郷である北海道に戻るときに時々、電車とシカが衝突したために電車が止まることもあったことを思い出す。
他にもニホンジカが多いのだが、日本各地で農産物や木々の「食害」もあるのだという。

第六章「ツキノワグマ―絶滅の危機からの脱却」
クマの出没がニュースになる時期は、だいたい春頃から初夏にかけてであるが、北海道に住んでいた時は「ヒグマ」がおおく、「ツキノワグマ」は本州に住み始めてから知った。
しかしそのツキノワグマは、本州では多く生息しているのだが、四国では絶滅の危機に瀕しており、九州では既に絶滅しているのだという。

第七章「イノシシ―人の餌付けが悲劇を生む」
イノシシも電車との事故は西日本を中心に聞く。それだけではなく、人里に入って農産物を食べる、いわゆる「食害」やさらには小さい子どもなどの人間を突進して襲う被害もある。
しかし、この原因はイノシシ、というよりも好奇心からか「餌付け」をする人にあるのだという。

第八章「外来生物 アライグマとヌートリア」
外来生物が日本にやってくる場合、船などに紛れ込んでくるケースもあれば、ペット目的で外国から輸入するケースもある。
外来生物の例として、人里の餌を食い荒らすアライグマもあれば、巣穴をつくることによって土手や堤防を破壊する危険性のあるヌートリアまで存在する。

第九章「野生動物管理と獣医学」
動物の獣医はゴマンといるのだが、「野生動物」専門の獣医はあまり聞かない。野生動物なのに、なぜ獣医が必要なのか、という疑いを持ってしまう。
それは、捕獲をした、あるいは不慮の事故や事件により、動物に怪我をさせた場合に治療を行い、野生に帰すことを担っているのだが、野生動物の獣医のつとめであるという。
本章では獣医としての治療の他に、怪我をしている動物の捕獲についても言及している。

第十章「森林から野生動物との共存を考える」
元々日本では里山や森林もさることながら、野生動物とも共存を行いながら生活をする事ができた。ましてや日本人と動物は良きパートナーとしていたとも言われている。
しかし、急速な開発などにより食物連鎖の起こる生態系が崩れてしまったと指摘している。

第十一章「獣害と地域住民の被害認識」
昨今から止まらぬ「獣害」は、獣害を受けた地元住民にたいしてどのように意識しているのだろうか。本書の著者は博士課程論文の際に訪れた青森県のとある村を取材したときのエピソードについて綴っている。
そこはニホンザルによる食害が目立ったのだが、住民とニホンザルの「軋轢」と「複雑な事情」が横たわっているように思えてならない。

第十二章「日本人の動物観」
第十章で日本は昔から野生動物と日本人は共存していたのだが、根本的な考えの中には「野生動物を幸(さきわ)う」ことが自然にあったからだという。他にも食肉も天武天皇の時代から禁止されたり、徳川綱吉の「生類憐みの令」が発令されたり、動物に対する尊い感情もあったのかもしれない。

第十三章「倫理面から見たワイルドライフ・マネジメント」
第三章にあった「ワイルドライフ・マネジメント」の続きであるが、そもそも自然に増えたり、減ったりする野生動物を人間の手によって管理されるのか、という倫理的な疑念もある。これに関しては倫理学的な観点もあれば、宗教的観点もある。さらには科学的観点など様々な学問から観点が存在するので、疑念を晴らすことは難しいと言える。

日本は、今も昔も動物とともに共生している社会である。しかし、本書で紹介したような「獣害」、もしくは「食害」に悩まされているのも事実としてあげられる。このことはただ譚に動物を駆逐すれば良いわけでもない。人間としても、動物に対してどのように接すれば良いのか、動物の行動から放たれたメッセージとして捉え、対応をしていくしかないことを伝えている。

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