海賊党の思想~フリーダウンロードと液体民主主義


「海賊党」と言う言葉はあまり聞いたことがない。むしろ本書に出会って初めて聞いたとも言える。「海賊」だからソマリア沖などで猛威を振るっている者達のことを想像してしまうのだが、そうではない。
しかし本書で言う「海賊」はそうではなく、DVDなどの「海賊版」のことを指しており、21世紀のヨーロッパで徘徊しているのだという。
それらのことをまとめてみると、「海賊党」は「不正ダウンロードや不正コピーを推奨している党」なのかというとそうではなく、こう定義している。

「自明のこととされてきた著作権や知的財産権の本質を問い、ネット時代の現代において、その見直しを要求している」(p.4より)

つまり、著作権そのものの改正と言うよりも本質に関する議論を行いながら、世界各国や国連に条約・法律の改正を要求するといった方々の集まりである。いかにも怪しいネーミングである「海賊党」は以下にしてできて、これからどこに向かうのかについて追っている。

第1章「発祥の地のスウェーデンで起きたこと」
海賊党」がスウェーデンで誕生したのは2006年1月の事である。誕生したきっかけは2005年6月にP2Pソフトが著作権法違反の疑いにより逮捕されたことに対する反発によるものである。
最初にも書いたのだが、著作権や知的財産権の解釈や規制強化の暴走を食い止め、国民のあずかり知らないところで法改正され、法を犯したことも気付かずに著作権違反により逮捕されてしまう、といった事をストップし、文化など著作にまつわる様々な観点から著作権の在り方と議論・提言するとともに、知的財産権についても言及している。

第2章「海賊党出現の舞台裏」
そもそも著作権・知的財産権を議論するために、なぜ「海賊」を連想させたのだろうか。それは元々ヨーロッパ大陸にある海賊の歴史と風刺精神、あるいは反骨精神によるのだという。

第3章「ドイツ海賊党の台頭」
スウェーデン以降、EU各国で「海賊党」が設立されるようになった。2006年の話である。当初の桐蔭は数えるほどしかいなかったものの2009年5月の「EU議会議員選挙」をきっかけに急速に党員を増やしていった。

第4章「ドイツ海賊党の主張」
「ドイツ海賊党」の主張にある最大の根幹に「液体民主主義」と言うのが挙げられている。民主主義とはどのような違いがあるのだろうか。根本的な所は民主主義と一緒であるのだが、議決の方法としてインターネットを使って行うという所にある。市民は法案に対しての投票権があり、専門家に委任することができると言うものである。簡単に言えば「直接民主主義」にインターネットを加えたものである。

第5章「デジタル社会とヨーロッパの政治」
インターネットの普及は世界各国で進んでいるのだが、ヨーロッパをはじめとした先進国も著しい。そのインターネットの普及に伴って、知的財産権や著作権の法案成立も含めた政治による影響も出てきている。またスウェーデンから始まった「海賊党」の思想が国境を越えてドイツなど各国にも伝藩している。

第6章「海賊党の思想」
海賊党の思想としての三本柱がある。

「フラット化」
「透明性」
「ユビキタス化」

というのがあり、インターネットの普及をフルに扱って、メディアの権力を壊しながら双方向に情報のやりとりを行い、政治にしてもネット政治として、裏工作や密室政治のようなアンダーグラウンドで行う活動を取っ払い、いつでもどこでも政治に参加することができることを理想であり、目標としている。
しかし、インターネットでも「匿名性」がしばしば議論されており、匿名で余計に政治的干渉をおこなう、といったリスクも捨てきれない。

第7章「海賊党の行方」
第3章でドイツ海賊党は急速に成長したと書いたものの今年に入って、海賊党の支持率、及び党員が減少の一途を辿っている。ドイツ海賊党は今の海賊党そのものの現象を反映しているとしたら、未来は暗いと言える。

第8章「日本のネット事情と日本海賊党」
日本では昨月行われた参議院通常選挙で、初めて「ネット選挙」が取り入れられ、話題となったが、実質的に投票には結びつかないことが多く、投票率も参院選としては過去3番目に低い数値となった。
話は変わるが「海賊党」という名前は日本でも使われ始めている、昨年の10月に「日本海賊党(日本海ぞく党)」が設立され東京都選挙管理委員会にて受理された。現在は十数人ほどの小さな政党であるが、従来の選挙制度などをどのようにして「風穴」を開けるのか注目である。

もはや政治とインターネットの関係は看過できないものになった。海賊党は両方の関係によるひずみを正すべく世界各国でできたことを考えると、勢力そのものは続くと思うし、ひずみが起こっている限り、今日も様々なところで活躍しているのかもしれない。

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