「愛」なき国 介護の人材が逃げていく

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アベノミクスにより経済は回復の兆候があるように見えるが、業界によっては恩恵を受ける以前からずっと悲鳴を上げている。とりわけ今後ますます需要が増してくる介護業界はことのほか悲鳴の度合いは大きい印象を持っている。その一方で介護現場にて起こっている事件もあり、その中には企業ぐるみで行われているものも存在する。
そもそも介護および介護保険制度は、高齢者の方々への「愛」でもって接するシステムであるが、それが失われている状態にある。本書はNHK取材班による取材をもとに、「今介護の現場で何が起こっているのか」を表している。

第1章「“介護する人”が、誰もいなくなる!」
介護業界で慢性的な悩みの種となっているのが「人材不足」である。毎年のように人は介護業界に入っているものの、看護師に匹敵、あるいはそれ以上の心身負担がかかってしまい、2・3年もしないうちに辞めてしまう人も少なくない。
また、仕事も不規則で行われるケースも多々見られており、生活そのものも不規則になるため精神疾患にかかるケースも多く、病気により、業界を離れるケースもある。
人が定着することができない、あるいは人手不足の結果、休日の少ない状態が続き、体力・精神力敵に限界に来ている人もいる。
さらに収入・経営の面でも「努力をしても報われない」状態が続いている。

第2章「「恍惚の人」の時代に戻ってよいのか?」
「恍惚の人」は1972年に有吉佐和子が上梓した同名の小説である。今で言う「認知症」の舅(しゅうと)を持った家族の物語である。上梓された当時、介護施設はごく僅かであり、老人の面倒は「家庭」で看るべき、というのが常識だった。
時代は移り介護施設も乱立し、認知症の患者もリハビリとして施設に通う、もしくは入る方も多いのだが、資金不足、あるいは介護施設側の受け入れにより、自宅で介護をするほか無いと言う人もいる。制度も改善の方向に向いているのだが、現実に追いついておらず、「恍惚の人」の時代に逆戻りしている傾向にある。

第3章「なぜ、制度がうまく回らないのか?」
介護制度にはまだまだ課題は存在するが、介護を巡った事件も起こっている。有名どころでは2006年12月に起こった「コムスン事件」が起こった。この事件は「介護報酬を組織的に水増しした」ことによる「不正請求」により自治体より「業務改善勧告」という行政処分を受けたという事件である。ほかにも虚偽申請が次々と見つかりコムスンは廃業に追い込まれた。
本章では「コムスン事件」をもとに、介護業界で何が起こっているのか、そしてコムスン廃業後に受け皿となった「ニチイ学館」の今について追っている。

第4章「規格どおりの介護がよい介護とは限らない」
介護には様々な制度・規格が存在するのだが、それらを意識せず、むしろ介護する・介護を受ける「人」を意識した仕組みを作り、双方によい影響を及ぼしたケースを紹介している。中小企業や福祉法人と言った地域と人に根ざした独自の介護事業を紹介しながら、これからの「介護」とは何かを見出している。

「愛」と言う言葉は地域や故郷、あるいは人と接することによって生まれる。接し方は会話もあれば、手紙もある、しかし本書では「介護」を通じて人との「愛」を見ている。制度を作る人にとっても、介護を行う人に取っても、介護を受ける人に取っても、そして本書や当ブログを拝見している人に取っても、そこに「愛」があるのか、一度考えてみる必要がある、そのことを現状とともに知るきっかけとなる一冊である。

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