銀幕の銀座 – 懐かしの風景とスターたち

東京・銀座には今、高級感と華やかさが漂っている。立ち並ぶ店はこぞって高級店や個性的な店であり、日本はおろか世界中のセレブやビジネスマンも通い詰める。
このような形になったのは東京オリンピック以降のことであり、それ以前は銀幕や歌と言ったものが盛んな街だった。

銀幕の中心だった時代、それは戦前のモダン以降の時だったのだが、その時に活躍したスターたちにフォーカスを当てているのが本書である。

Ⅰ.「戦前のモダン都市東京」
昭和11年に大ヒットした曲がある。後に国民栄誉賞を受賞することになる藤山一郎が歌った「東京ラプソディ」がある。この年には事件として二・二六事件が起こっている。世相は混乱に満ちていたのだが、前述と同名の映画もあれば、「女人哀愁」「花籠の歌」などの映画もヒットし、栄えた。当時の映画はサイロ連と映画は多かったものの、昭和5年に放映された「マダムと女房」以降、「トーキー映画(映像と音声が同期した映画)」が増えていった。

Ⅱ.「戦争の傷跡と復興の熱気」
大東亜戦争が終わり、復興の息吹がかかりそうになる中で、映画も平和に向けた作品、あるいは軍国主義批判をした作品が出てきた。映画作品で言うと、池部良と杉葉子の主演コンビ作品もあった。有名どころでは、映画に歌にと社会現象となり、今もなお語り継がれている「青い山脈」がある。

Ⅲ.「小春日和の恋人たち」
日本がGHQにより実行支配から解放されたのは1952年、サンフランシスコ講和条約が締結されたときである。その前後に作られた作品には日本を代表する特撮映画「ゴジラ」が挙げられる。この作品が作られたきっかけにはビキニ環礁における水爆実験により、第五福竜丸が被曝した事件が起こったことによる。
他にも都会・東京、あるいは銀座を舞台にした作品も「新東京行進曲」が上映された。映画の他にも日本劇場や松竹ピカデリー、有楽座などの喜劇やショーが、あるいは東京宝塚劇場で行われる宝塚歌劇なども栄え始めたのもこの時期である。

Ⅳ.「高度経済成長で変わる風景」
時代は高度経済成長に入ったときには、映画俳優の顔ぶれも変わっていった。後に「歌姫」と呼ばれるようになった美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」が頭角を現し、「ロマンス娘」のように三人とも出演した作品もあり、どちらかが主演する映画も頻発した。さらに初代ミス日本となった山本富士子の主演作品も「夜の蝶」をはじめ多数出てきた。
「マイトガイ」と呼ばれる小林旭が活躍したのもこの時期であり、日活のアクション映画「銀座旋風児(マイトガイ)」の出演により、「マイトガイ」と呼ばれるようになった。

Ⅴ.「颯爽とした女たち」
時代は東京オリンピックに近づき、銀座を舞台にした映画も多数出てきた。その中で女性が主人公になった作品も多数ある。
ちなみに本書で取り上げていないものの銀座には「歌」がある。それはシャンソン喫茶である。美輪明宏をはじめとした多くのシャンソン歌手を排出した「銀巴里」が有名である。

銀座には東京オリンピック以降、様々な高級店が立ち並んだのだが、それでもまだ宝塚劇場や日本劇場などまだまだ「映画」や「劇」「歌」などの名残はまだまだ残っている。
本書はあくまで「銀座」を舞台にした作品を取り上げているが、それは当時「映画の街」である銀座と、東京の風景としての「銀座」がそこに映っている。