「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法

著者の鈴木様より献本御礼。
「空気」というのは日本では重用されているのだが、2007年に「KY」が流行語になったように、日本人は「空気」そのものが過度に敏感になってしまっている。しかもその「空気」を乱すことを極端に嫌い、動かそうとすると排除されるようなものを醸し、「空気」のままに物事が進んでしまう。そのことで悲劇を繰り返してきた歴史がある。

そう考えると、「空気」そのものが悪者のように見えるのだが、実際に「空気」を良い意味で操ることができると、自分の仕事にしても、人生にしてもうまくいく。
本書はその「空気」の重要性と動かしかたについて伝授している。

第1章「「空気」を動かすことがなぜ重要なのか?」
「空気」は良い方向に回ることもあれば、悪い方向に作用することがある。その発生源が相手に作用することもあれば、自分自身に作用することもある。悪い作用をする事もあれば、良い作用もする。それは「空気に勝つ」か「空気に負ける」といったことにある。

第2章「「空気」の違いを知る」
「空気に勝つ」ためには、「空気」にだまされていることを知る。それを前提から解放するために、自分自身が置かれている空気の「タイプ」を知ることにある。そのタイプには「問い」「体験」「検証・測定」「選択肢」といったことから「空気」が生まれる。その「空気」は時事的なことから、仕事、スポーツと言った所まで引き合いに出している。

第3章「「空気」を動かす方法」
良い空気であれば、動かしても放置しても何の問題も無いのだが、悪い空気であればあるほど動かすようにして行く必要がある。本章は悪い空気を動かすために、第2章で紹介したタイプを元に「4つのスキル」として紹介している。
本書の中で最も重要なところであり、各スキルとも「ケーススタディ」という形で具体的にどのように動かせば良いのかを示している。

第4章「「空気」を読めるとは、どういうことなのか?」
「空気を読む」ことは一流の人にとってごく当たり前な行動である。しかし今の「空気」を読んで、それから楽しむか、変えていくかを判断している。「非日常」と呼ばれる空間も、日本における伝統芸術にしても「空気」によって構成されている。
その空気を読んで気を遣うか、突破するのか、楽しむのか、あるいは立ち向かっていくのかというのはその場の空気によって変わってくる。

第5章「「空気」を動かすテクニック」
第2章では「空気を知る」、第3章では「空気を動かす」と言った方法について紹介されたのだが、ここではもう少し踏み込んで実際に言葉に出したり、アクションをしたりするという、いわゆる「テクニック」を4つのタイプ別に伝授している。

本書を読んでいるとふと思い出すのが、評論家である山本七平「「空気」の研究」である。他にも「空気」に関する本は色々とあるのだが、本書はその「空気」についてをビジネス向けに落とし込んだ一冊と言える。ビジネスの世界も「空気」が大事であり、状況によっては良い方向に変えることが大切であることを教えてくれる一冊である。