治す! うつ病、最新治療 ──薬づけからの脱却

「うつ病」は21世紀になってから「国民病」と言えるほど、罹患者が年々増えており、自殺に追い込まれる、あるいは生きていたとしても、社会に復帰することができなくなった人も少なくない。

その「うつ病」を治療する、あるいは予防するために「薬」を使う人もいるが、その方々は一生「薬漬け」と呼ばれる様な状態に陥っているのだという。

その「薬漬け」と呼ばれるような毎日から脱するための新しい治療法として「TMS治療」「光トポグラフィー」と呼ばれるような方法があるのだという。本書は薬に依存しない、依存させない新たな「うつ病治療法」と提示している。

<うつ病に挑む!新たな選択肢~脳の機能を高めるTMS治療>
まずは「TMS治療」についてである。これは「経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激治療」と呼ばれ、治療専用の機器を使用して、脳に磁気の刺激を与えて感情を刺激してうつ病を直す方法である。
元々は1985年にイングランドのシェフィールドで生まれ、日本にも2012年末に取り入れ始めた。しかしまだ認知度は低く、これから新たな治療法として注目され始められる。現にアメリカでは多くの治療例が出てきており、本章でも何人か治療者を取り上げている。

<誤診を見抜く、脳の可視化~光トポグラフィー検査>
次は「光トポグラフィー」であるが、1995年に日立が公開シンポジウムで発表したことから始まったことから「日本産」の医療技術である。誕生した当初は全国各地で問い合わせを受けたのだという。
統合失調症やうつ病などについて、脳内を可視化することで病の傾向を短時間でわかり、誤診も少ないことから現在も注目を集めている。

<思考と習慣をコントロール~認知行動療法で乗り越える>
うつ病になる傾向として、習慣や思考そのものにパターンが存在する、その「パターン」を修正し、行動計画を立てることによって「コントロール」を行うことを「認知行動療法」と呼ばれており、薬や電気とは異なるような治療法である。長期的な治療法であるが、人間としての行動を変えるため、再発する可能性は少なくなる。しかしこの治療法は日本でも限られたところでしか行われておらず、広がりを見せていない。これは日本の医療体制、簡単に言えば保険制度や人材育成がうまく行っていないというのが大きな課題として挙げられる。

<悪循環に陥ったうつ病治療~薬づけから減薬の時代へ>
うつ病の治療はどんどん最新技術が出てきているのだが、「認知行動療法」の中でも書いたのだが、医療体制における「障害」があってか、認知されておらず、かつ新しい治療法を取り入れる医療機関が少ない。精神病に関する処方は「薬」にしか頼るものがない医療機関も少なくない。しかも医師自身も薬物に対する教育を受けておらず、薬剤師の言われるがままに薬を投与したり、処方したりするようなことが起こっている。それ故に強い向精神薬を大量に処方・投与を受ける人もおり、その副作用で別の病気にかかり、亡くなったり、自殺したりした方もいる。本章ではこのような薬物投与の危険性について遺族や精神科医から警鐘を鳴らしている。

精神医療については次々と新たな技術が採用されており、治療事例も多く見受けられる。しかしそれが日本中で認知され、確立するには時間がかかる、もしくはできない可能性もある。今もなお増え続けている。時には些細なことで「うつ」と認定されるようなことがあるのだが、もっとも治療法に頼るよりも、人間本来ある考えや行動、習慣を取り戻すだけでも、落ち込みやネガティブな感情を和らげることができるのだという。本書は最新の治療法を提示したのだが、同時に認知医療の課題の多さ・深さを知らしめた一冊である。