ドール~ルクシオン年代記

SF

今までいくつかSF作品を呼んだ事のある私だが、「ドール」と「レディ」の2編だけでこれほど分厚い物を読んだにもかかわらず、スリリング、かつ爽快さを覚えた小説は存在しない。むしろ分厚さも苦にならないほど、スイスイと読むことができる。

最初に「ドール」だが、よくある「SF作品」というと、宇宙で働く人、科学者、戦闘員といった、どちらかと言えば「人間」が描かれることがほとんどである。この「ドール」も人間のようにみえるのだが、実は人間ではない。「ドール」と名付けられているといって、別に「機械人形」ではない。そう考えると一帯何物なのか・・・それは読んでみてのお楽しみである。なぜ言わないのかというと、主人公の存在を言うこと自体が物語の根幹そのものに関わるからである。

次は「レディ」であるが、ドールと同じ「ルクシオン」シリーズに当たるのだが、シリーズの「外伝」に当たる作品である。こちらの主人公は女の子・・・だが車型のマシンをしている。そのマシンに一目惚れした男がマシンに恋をしたことから物語は始まるのだが、マシンは人間とのふれあいながら戸惑い、そして恋を受け入れるという、どちらかというと、ある種のラブストーリーもはらんでいる所が魅力としてある。ドールよりももっと読みやすく、かつ、恋愛物が得意な人にも向いている作品である。またSF作品であることを忘れてはおらず、SF作品ならではのスリリングさも表現されている。

両作品に言えることだが、SF作品の中でも「大作」と言えるのだが、中身は感情移入がしやすく、それでいて、読んでも苦と感じない、清々しい展開を見せている、SF初心者でも本書から入ると、SF作品の面白味も沸いてくるし、SF作品に飽きた人でも、新しいSF作品として触れるとまた面白味を増してくる一冊である。