ジューン・プライド

「ジューン・ブライド」と言う言葉は聞いたことがある。調べてみると、

「6月に結婚する花嫁。西洋で、6月が女性と結婚生活の守護神ジュノーの月であることから、この月に結婚すると幸福になるとされる。」「広辞苑 第六版」より)

とある。簡単に言えば、6月に結婚をすると幸福になる、という迷信、と言うより神話から来ているのである。
では、本書のタイトルは「ジューン・プライド」。

「ブライド(花嫁)」と言うのではなく、「プライド(自尊心・矜持)」を表している。現実世界ではあり得ない話だが、物語の主人公は6月生まれ、しかし6月生まれなのに「逆うるう年」と言われる現象で「6月が来ない」といわれる。その6月に20歳を迎える主人公は、

「ダメダメ、そんなイベントがあっていいわけがない。だって、十代とさよならする貴重な誕生日が、今年の六月に控えているというのに。
 そんなの、あってたまるもんですか!」(p.12より)

と、6月生まれのプライドを見せながら、あらゆる手を駆使して、自分の誕生日を迎えさせるように躍起になる。その中でいくつも起こる「運命」が彼女と、彼女の思いを翻弄させる。

本書を見る前は「ジューン・ブライト」と見間違えた様な感覚に陥ったのだが、中身は、まさにタイトル通りの主人公の姿があった。「プライド」の矛先を近しい相手だけではなく、「逆うるう年」を決めた、あるいはそれによって大事な誕生日のある6月を失わせた人たちに向けている。現実とはかけ離れた不思議さを醸しながらも、ドタバタ感が心地よかった一冊である。