見えないアメリカ

アメリカはでは先々月末から先月半ばにかけて、政治的な対立が深刻化し、あわやデフォルトになるような状態にまでなってしまった。もしデフォルトとなってしまうと、世界経済にも「リーマン・ショック」をはるかに越える影響を及ぼすことは間違いなく、極論となってしまうが、政治的な孤立になることもあれば、軍事的にも「第三次世界大戦」にもなる可能性があった。

ひとまず一段落はしたものの、一時的なものであり、来年早々にはまた同じようなことが起こることも大いにあり得る。詳しい話は第1章の所で詳しく述べることとして、本書では、私たちのわからないアメリカの本性を暴いている。

第1章「「保守」と「リベラル」」
章のタイトルにある対立はアメリカにてよく使われるものである。簡単に言うと、政治的なもので、

・「保守」→共和党
・「リベラル」→民主党

といった対立である。しかし、この2つの対立は妥協点を見つけるわけもなく、むしろ対話をしても平行線になることが多い。先々月末から起こったデフォルトの危険性になることも、アメリカの二大政党制や「保守」「リベラル」の対立が生み出した綻(ほころ)びが生み出した産物だった。

第2章「都市―移民のシェルター」
アメリカはイギリスからの移民により、国が作られ、その後各国から積極的に移民を受け入れた。移民を受け入れた中で、人種差別が深刻化し、さらに「都市」によってシェルター化しているのだという。
さらに、

「アメリカに特徴的で、日本ではあまり見かけない習慣に、一戸建てを複数の他人とシェアするという住み方がある。」(p.66より)

出版当初(2008年)ではあまり知られていなかったが、現在ではよく知られており、かつ社会問題化している「シェアハウス」の概念である。アメリカの都市の概念は日本にも伝搬されていったのかもしれない。

第3章「南部―怒りの独立王国」
アメリカが建国した当初は南北対立が起こっていた。その原因として南部は「奴隷制」が合法化されており、北部は禁じられていた。その対立が引き金となり南北戦争が勃発した。戦争後に南北統一したが、南北の対立は今でも「反ワシントン」という形で残っている。
この南北対立を見ると、本質は違えど日本における関東・関西の対立の構図に似ているところがある。(反中央といったところが挙げられる)

第4章「信仰―共同体にひそむ原理主義」
アメリカで最も多く信仰している宗教はキリスト教であり、プロテスタントの宗派である。他にもカトリックを信仰したり、イスラム教を信仰したりしている民族や地域も存在するのだが、アメリカと宗教との関係は密接でないように見えて密接な部分もある。例えば共和党を強く支持している「宗教右派」と呼ばれる団体も存在しているのが大きな理由として挙げられる。この「宗教右派」はキリスト教の原理主義としてあげられており、同性愛や妊娠中絶に強く反対しており、またイスラム教など他宗教には排斥の態度を持っている。

第5章「メディア―大衆化の舞台装置」
アメリカの政治のほとんどはメディアを大いに利用し、国民に伝えている。これは日本でも同じ事が言えるのだが、アメリカは分かりやすく二極化を強く進める、テレビタレントや俳優をはじめとした芸能人にも政治的主張をするなど国民の関心事にさせる装置として存在する。

日本でもアメリカの政治について取り上げられることは度々ある。政治事情が日本の政治・経済に影響を与える可能性が高いからなのかもしれない。そう考えるとアメリカの「見えない」部分について知る必要があるのではないか、と著者は考えている。アメリカの情報に右往左往されず、見えない部分の情報も含めて、アメリカとどう付き合っていけば良いのか、それを考えるきっかけとなるのが本書である。