判断と決断 ―不完全な僕らがリーダーであるために

リーダーとしての資質が問われるものとして色々なものがあるのだが、中でも「判断」と「決断」はリーダーにおいて重要なスキルであり、ムダに迷ってしまうチームを補う道具として用いられるのだという。著者にとって、「判断」と「決断」とは、

「判断」・・・過去について評価すること
「決断」・・・未来への方向性を打ち出すこと(p.4より)

とある。その「判断」と「決断」はどのようにして作られていくのだろうか。著者は早稲田大学ラグビー部監督を経験したのだが、本書は監督の経験から綴っている。

第1章「僕らを混乱と不安から救い、未来へと導く判断と決断という道具」
著者が監督を務めるまでは早稲田大学ラグビー部は「名門中の名門」と言われており、関東大学対抗戦で「常勝」と言える様なチームだった。著者が監督を務めてからは、初年度は優勝を逃し、2年目で優勝を勝ち獲ったが、3年目のある日、帝京大学との試合で屈辱的な大敗を喫してしまった。この「大敗」はいったいどこにあるのだろうか。本章では当時の状況を綴っている。

第2章「正しい判断は、大量かつ多様な情報の収集から始まる」
判断をするためには過去の情報を得るところから始まる。著者はラグビー部を強くするために、推薦枠の候補選手を獲得すべく、全国各地のラグビー名門校を回り、情報を収集したのだという。

第3章「情報の山を仕分けて判断。そこに「冷静」がやってくる」
情報の収集した後、今度出てくるのは「仕分け」である。獲得したいラグビー選手であるなら、選手のポテンシャル、キャラクター、ポジションがあり、有力なもの、足りないものを見つけ、仕分けることによって、最適なチーム作りをおこなうに最適かどうかを選ぶことについて「冷静」になることができる。

第4章「考え抜いて強く決断する。気付くと「興奮」の只中にいた」
過去の「判断」は「決断」をする際の参考材料でしかなく、時には思いもかけないこと、過去にあり得なかったことを行うことを「決断」という。シーズンの中では著者自身とんでもない「決断」と行う。そのためには過去の材料も含めて考え抜く、と言うことが大切である。

第5章「どう動くのか、何を言うのか。ストーリーとシナリオが決断を実現に導く」
チームとして勝敗をどうするのか、ゴールに向けてどう導くのか、逆境に対してどのように乗り越えるのかを綴っている。

第6章「現場で起こる「想定外」に対峙する瞬時の決断。それを支える直感」
勝負の世界には時として「想定外」と呼べる様な状況も往々にして起こる。そのような状況の中で必要な力として、著者は「直感」を挙げている。

第7章「判断と決断は、結局、組織マネジメントのフレームワークである」
判断・決断両方とも、重要な要素である。過去を知り新しい未来を描くために身につけるべき力であり、組織を活性化するために大切であることを著者は説いている。

リーダーについて重要な力は何なのか、それは人それぞれ異なる。著者は「決断」と「判断」だが、組織の方向性を決めるのもリーダーの役割とするならば、正しい方向へ向かうことがリーダーの最も重要な役割である。その役割を担うための根幹が「判断」「決断」の2つの柱であるという。