商店街再生の罠~売りたいモノから、顧客がしたいコトへ

「商店街は衰退している」という声をよく聞く。その原因には「ショッピングセンター」や「ショッピングモール」などの大型店が乱立し、商店街は衰退した、と言う声が後を絶たない。

しかし、本当にそうだろうか。

というのは、確かに衰退した商店街は存在するのだが、人口の流出もあれば、商店の多くは店主が老齢に伴うことによる閉店もある。また、「変化を嫌う」こともまた衰退の一途を辿らせている原因としてあり、現に、新しい考え方を構築して商店街を再生させた、あるいは大型店と引けを取らない活躍をしている商店街も存在する。その違いはいったい何なのか、本書は商店街が陥ってしまう「罠」を解き明かすとともに、地域単位、商店街単位でできる「再生戦略」を提言している。

第1章「レトロ商店街の罠」
商店街と言っても色々なものがあるが、特徴的な商店街の多くは「レトロ」と呼ばれる一昔前の風景を再現したものである。「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画が大ヒットし、一種の「レトロ・ブーム」を巻き起こしたのは間違いないのだが、ブームに乗じて変化はさせたものの、「その場しのぎ」にしか効果が出ず、衰退してしまった商店街がある。本章では大分県豊後高田市の「レトロ商店街」をモデルケースに考察を行っている。

第2章「キャラクター商店街の罠」
キャラクターというとマンガやアニメなどに出てくるキャラクターをモチーフにした商店街のことを指している。その成功例の一つに挙げられるのが鳥取県境港市にある「水木しげるロード」と呼ばれる商店街である。この成功からいくつかの商店街では地元のキャラクターを生かした商店会づくりに挑んだが、失敗してしまった。

第3章「B級グルメ商店街の罠」
最近ではB級グルメが話題を呼んでいる。私自身もB級グルメには興味があり、もし全国津々浦々を旅するのであれば、是非色々なB級グルメを食べてみたいものである。
私事はここまでにしておいて、最近話題となっているB級グルメを過信してしまい、かねてからある名物を埋没してしまい、衰退を余儀なくされた商店街も数多く存在する。その原因には市町村民の本来の「声」が聞けていない、もしくは無関心であることなどが挙げられている。

第4章「商店街を利用しない公務員」
商店街をつくるのは市民もそうであるが、大きな役割を担うのが地方行政、つまり公務員である。その公務員が、マイカーで通勤する、もっと言うと自分が働いている市町村の隣のところに住んでいて、そこからマイカーなどで出勤する公務員もいる。
しかし著者はマイカーではなく、市民の声を聞くために電車やバスなどの「公共交通機関」を利用する事などを提唱している。

第5章「意欲が低い商店主」
商店街の衰退は大型店であったり、公務員であったり、他人に向けられることが多いのだが、本当の原因の一つには商店街自身、つまり商店街で店を構えている商店主自身にあるのではと著者は指摘している。地域住民に密着した商店街なのだから、地域住民に合わせたサービスを考案する、といったことは商売をしている上で避けて通れない「変化」である。

第6章「再生戦略① 「シェア」で、雇用・起業を創出」
さて、ここからは著者が「再生戦略」として商店街活性のための提言を行っている。一つ目は昨今話題となっている「シェア」である。これは地域単位で雇用や起業を生み出しつつ、お互いに助け合い、貢献し、成長するといった化学反応を起こさせる効果がある。

第7章「再生戦略② 「地域経済循環率」を高めて、第一次産業と共生」
「第一次産業との共生」は簡単に言えば「地産地消」を推進することにある。本章では第一次産業を生かした「スローフード」や「地域経済循環率」を重視した取り組みを紹介している。

第8章「再生戦略③ 趣味を媒介に「地域コミュニティ」を育成」
商店街を趣味に使うこともできるという。地域コミュニティを作らせ、地域住民が利用することによって、地域住民と商店街の関係を深めている。本章では千葉の図書館を中心に取り上げている。

経済が変化するのと同じように商店街のあり方も変化する。その変化が地域に根ざしたものなのか、はたまた地域を無視した物なのか、願わくば前者であろう。そのためには本書のサブタイトルにある「顧客(地域住民)」が行いたいことに柔軟に対応した商店街をつくることが商店街復活につながる。