世界最悪の紛争「コンゴ」

コンゴ民主共和国(以下:コンゴ)では、2007年8月にウガンダ側の「ヘリテージ・オイル社」とコンゴ側とで、石油を巡り、交戦状態にあった。事実上のウガンダとコンゴの「戦争」と呼ばれるような状態であった。この紛争は現在も続いており、毎年4万5千人ほど命を押しているのだという。ただ、一つの光明が見えたのは今年の2月、国際連合による「安定化協定」がコンゴやルワンダを中心に調印されたことにある。しかしそこにウガンダの名前はなく、和平に向けてどのように進むのか未だに不明瞭である。
本書は、現在も続いているコンゴの現状について、現地の活動を通じて綴っている。

第1章「コンゴとその東部の悲惨さについて」
最近のニュースではシリアもさることながら、災害に遭ったフィリピンも取り上げられる。日本のニュースで最もよく言われるのは隣国である韓国や中国くらいかもしれない。
しかし、本書で紹介するコンゴはあまり知られていない、というか全くと言っても良いほど報道されていない。
コンゴの歴史は「戦争」の歴史そのものだった。とりわけ第二次世界大戦後、ベルギーとの独立戦争が起こり、1960年にベルギーから独立を果たす。しかし独立後間もなく「コンゴ騒乱」と言われる内乱が起こった。5年後、軍人だったモブツ・セセ・セコがクーデターを起こし、実験を掌握、国名を「ザイール」に変えて30年以上にわたり実験を握った。モブツが死ぬ間際に「第一次コンゴ戦争」が起こり、現在の国名になったのだが、ほどなくしてフツ族ツチ族の民族対立が激化し、「第二次コンゴ戦争」が起こった。終結を向かえたのは2003年7月だった。その後民主化への歩を進めていったのだが、最初に書いたような紛争が起こってしまい、現在に至っている。特に本章のタイトルにも書いてあるとおり、著者が赴いた北キブ州などの東部ではとりわけ悲惨な状態にあるのだという。

第2章「国内避難民の課題とジレンマ」
コンゴでは紛争・戦争により多くの難民が出てきた。著者はその難民・避難民の人道支援を行っているのだが、避難所でさえもままなっておらず、転々とする難民も少なくない。

第3章「一般市民が恐れる人権侵害」
紛争・戦争には「略奪」「性的暴力」「殺害」「強制労働」「拷問」などが横行する。特に「性的暴力」はコンゴでは酷く、毎年40万人もの女性が被害を受けている。
「人権」と言う言葉がまるでないような「無法地帯」と化しているコンゴでは人権侵害に対して「あきらめ」と「慣れ」の感情が交錯しているのだという。

第4章「国内避難民と難民の軍事化(武装化)問題」
難民・避難民は武器を持たない民間人が人道支援を行うためにあるのだが、コンゴでは軍人もキャンプに入り、そこで非人道的な行為を繰り返しているのだという。これに関しては人道支援を行っているUNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)の職員も頭を痛めている。対策として「武器禁止」を掲げるなども行ってきたが、効果は全くなく、むしろキャンプを軍が襲撃するような惨事も起きている。

第5章「困難な難民の帰還」
あまつさえ難民の人道支援もままならない状況のなか、難民の帰還もさらなる困難を極めている。ましてや帰還先の村のなかには行政や警察が全くないような無法地帯まで存在する。さらには難民の中には武装化した「ニセ難民」も存在しており、帰還をするやいなや襲撃する、と言った例も少なくない。

第6章「最強の武装勢力との交渉」
難民キャンプの人道支援を行うためには様々な修羅場を乗り越えないといけないのだが、中でも最たるものとして武装集団との交渉もあったのだという。この交渉はビジネスにおける交渉や国の外交とは比べものにならないほど厳しく、ましてや自らの「死」の危険性もあった。

第7章「コンゴ東部紛争と環境の関係」
現在行われている紛争は石油などの天然資源をめぐったもの、と公的に伝えられているが、実は民族対立、領土争いなど複雑な事情が入り組んでおり、真の要因はいくつもある、と言うほかない。

第8章「「舞台劇」の舞台裏で」
「舞台劇」を現在起こっている紛争だとするならば、「舞台裏」にはどのようなものが存在するのだろうか。舞台裏にはルワンダ・コンゴといった当事者だけではなく、フランスやトルコ、南アフリカ、北朝鮮など当事者外で様々な裏工作・闇工作が行われているのだという。

第9章「望ましい人道支援のあり方」
著者はコンゴで人道支援を行ってきたのだが、多くの死線を乗り越えてきた。乗り越えてきた中で、人道支援のあり方とはいったい何なのかについて綴っている。

第10章「紛争要因への対処」
現在の紛争を要因から解決に導くためにどうしたら良いのだろうか、両国の合意だけでは住まないことは確かであり、周辺国、さらには国連単位といった世界各国の協力なくしては難しい。しかし「政治的解決」は紛争・戦争の中ではなくてはならないものであり、著者もそれを望んでいる。

あまり報道されなかったコンゴの事情はシリアをはじめとした中東各国の暴動よりも、規模も大きく、長期的な紛争と化している。さらに言うと、紛争の中で難民は生まれるのだが、その人道支援もままならない事情は現在でも続いている。本書で伝えたかったこと、それは紛争が深刻化している「コンゴの今」だったのだろう。