四〇一二号室

本書のタイトルは本書で「最恐」と言われる事件の舞台である。その舞台はタワー型マンションと言われるところの40階にあることから「四〇一二号室」になった。私だったらあまりそう言う所に住みたくは無いが、見晴らしは良さそうと言うことは容易に想像がつく。

本書はミステリーホラー作品で在るが、怖さは他の作品を凌駕していると言っても過言では無い。「女の妬み」と言う言葉を最も忠実に、そして最もグロテスクに表現をしている。殺人事件とはいっても、恨みが大きい分グロテスクにできあがっている(本書が描き出す殺人はそれほどグロテスクではないのだが)。

あの殺人がどのようなトリックがあったのか、そして真の動機とは何なのか、不可解な証拠が紡ぎ出しているが、どんでん返しもあるなど、読者からしても何が真相か全く掴めないような状態で進んで行く。人に良っては「中だるみ」といえるような一冊かもしれないが、最後に向けての布石として、著者が仕掛けた「罠」であることも考えられる。そういった意味では本書のストーリーはもちろんのこと、読者の読解力と著者の意図との対決というのも楽しめる。