理科系冷遇社会―沈没する日本の科学技術

理科系の人は冷遇されているのだという。理系というと企業の「研究職」、もしくは研究機関に就職してさらなる研究を積み、世界一の技術を生み出す。
しかし、現状では世界的にも出遅れる兆候を見せているのだという。本書はそのことについて危機感を抱いている。

第1章「地盤沈下する日本」
確か、民主党政権下で「事業仕分け」を行っていたときに、とある女性議員が「2位じゃダメなんですか?」と言うような発言が話題となり、連日ニュースで取り上げられた。
しかし今では「2位にすらなれない時代が来ている」そうである。ハイテク製品の日本のシェアが減少し、さらに若手研究員が減少しているのだという。

第2章「理科系人材の冷遇」
「理科離れ」と言う言葉もあるし、研究者の冷遇もあるのだが、これは理科系に限ったことではない、研究者そのものも育てられる環境がほとんど無く、博士号を貰ったとしても、研究とは全く異なる定食につくか、非正規雇用、最悪ニートにまでなってしまう人もいる。

第3章「活かせない理科系人材」
企業の研究職は研究をした成果で企業の発展に寄与するのだが、その成果を出すまでの期間・予算が大きく制限され、さらに人材も流動化したことにより、「育てる」概念はあれども、環境にはなっていないという。

第4章「イニシアティブが取れない国際標準」
国際標準は世界に先鞭して、新しい技術を積極的に開発する、といったものが挙げられるが、元々リスクを忌避する日本人は、前例のあるものに追随する傾向にあるため、イニシアティブが取れないと言われている。

第5章「遅れが目立つ臨床応用」
医学にしても、新薬や医療技術の研究は進んでいても、「臨床試験」と言うような、実際に人間で行う試験を経ることが齢、その意味で臨床研究が弱いのだという。

第6章「各国とも科学技術を最重点に」
今の日本は科学技術に対する予算は回復傾向にあるが、それでも世界で戦えるというレベルまでには至っていない。もっと言うと民主党政権下で「事業仕分け」と言う名の予算削減を行った事により、科学技術の衰退を招いたとも見て取れる。

第7章「日本の科学技術の現状」
本章のタイトルについて、研究論文の数、全世界で発売されている主要科学雑誌の論文掲載数、そしてノーベル賞各賞の受賞者数を元に照らし合わせている。

第8章「科学技術で世界に挑戦・貢献を」
かつて日本の科学技術は「世界一」と呼ばれる時代があった。科学技術は今後の産業などにも大きな影響を与える観点から非常に重要なものであるという。そのため科学技術の発展は日本の技術革新や産業の発展につながるという。

「理(科)系」と呼ばれる方々が活躍している人は少なくないが、本当によいのだろうか、むしろ少なくなっているのでないか、という疑問を長らく研究機関にいた立場から取り上げたのだという。「冷遇」かどうかは難しいものの、科学技術の発展が他国よりも襲いという印象は捨てきれない、その一方で、それを解消するためには十年~数十年単位で見ていく必要があるため、難しいと言わざるを得ない。