琵琶法師―“異界”を語る人びと

「琵琶法師(びわほうし)」とはどのような存在かというと、

「平安時代から見られた琵琶を街中で弾く盲目の僧」Wikipediaより

とある。いわゆる盲目の芸能者で、おもに琵琶と呼ばれる弦楽器で演奏しながら旅を行う僧侶の事を指している。一言で言ってしまえばそれまでなのだが、実を言うと、この琵琶法師自体は平安時代に生まれ、江戸時代にも存在するなど、長きにわたって存在した要因とは何か、そしてなぜ琵琶法師が生まれたのか、本書ではそのことについて取り上げている。

第一章「琵琶法師はどこから来たか―平安期の記録から」

琵琶法師が生まれたと言うよりも「伝来した」と言う言葉の方が正しいかも知れない。その要因としてはそもそも琵琶自体がペルシャ周辺から中国大陸を経て改良され、日本に伝来された。この琵琶が中国大陸にて改良されたときに併せて琵琶法師が生まれている。中国大陸では「唐」王朝の時代であり、同じ時期に遣唐使が仏教の伝来のために来日するといった事もあった。それに併せて琵琶法師が来日し、技術などが伝えられた。やがてそれは貴族階級を中心に広がり、平安貴族における記録でも出てきている。

第二章「平家物語のはじまり―怨霊と動乱の時代」

元々「平家物語」は琵琶法師によって語り出されたものであるという。作者自体は今もなお諸説あるのだが、平家の滅亡を琵琶法師が語り出され、「死霊の語り」と言われたのは有名な話である。もっとも「平家物語」は「源平盛衰記」と呼ばれる読み物の説があるのだが、ここではあくまで「語り」としての平家物語が生まれたルーツを取り上げている。

第三章「語り手とはだれか―琵琶法師という存在」

平家物語の文体は読むための文章と言うよりも、どちらかというと「語り」を行うための文章に近いと言われている。なぜ語りとして読み物となっていったのか、そしてなぜ琵琶法師は平家物語を語りとして生み出したのか、そのことについて取り上げている。

第四章「権力のなかの芸能民―鎌倉から室町期へ」

江戸時代まで生き残った琵琶法師であるのだが、鎌倉から室町時代においては「権力」の流動化の中で衰退をするようになった。とはいえ、琵琶法師たちも一座として旅芸人というかたちで全国を旅するようになり、旅先で琵琶をもって語りを繰り返してきた。もちろん旅芸人のところでもいくつかの「派」と呼ばれる派閥もできた。

第五章「消えゆく琵琶法師―近世以降のすがた」

時代は戦国から江戸時代になってくると、幕府や藩などからの規制が厳しくなり、ますます活躍の舞台が限られるようになった。と同時に江戸時代には三味線が生まれ、なおかつ三味線使った浄瑠璃という演芸ができはじめたことにも起因している。琵琶法師は知られているだけでも明治時代初期まで残っていたが、やがて廃れた。

琵琶法師の語りは平家物語といった歴史的な書物ばかりでなく、それぞれの地域における伝承を語り継いだことにも大きく貢献している。今こそ廃れども伝承や物語の中に「琵琶法師」の存在がわたしたちの知らないところで貢献していることを忘れてはならない。